
「外食業の特定技能が止まった」——2026年3月末にこのニュースが流れて以来、飲食業の経営者の方から驚きと不安の声を数多くいただいています。実際、当社のお客様からも、採用を進めようとしていた矢先だったという戸惑いのご連絡が届きました。ニュースの見出しだけを見ると「外国人採用の門が閉ざされた」ように感じられますが、止まったものと止まっていないものを正確に切り分けると、見え方はかなり変わってきます。突然の発表に見えたかもしれませんが、実はこの停止措置は、特定技能という制度の設計上、いつか起こることが織り込まれていた出来事でもあるのです。
この記事では、2026年4月13日から始まった特定技能1号「外食業」分野の新規受け入れ停止について、「何が起きたのか」「なぜ止まったのか」「今もできることは何か」「いつ再開するのか」を、出入国在留管理庁の公式発表という一次ソースに基づいて整理します。仕組みから理解しておけば、今回の停止は「想定外の災難」ではなく「制度の織り込み済みの動き」として、冷静に次の一手を考えられるようになります。
私たちG-Star HR Linkは、ネパール現地の自社日本語学校で人材を育て、外食業を含む各業界へご紹介してきた人材紹介会社です。今回の停止は私たち自身も影響を受けた当事者であり、その立場から見えている実情もあわせてお伝えします。なお、本記事の情報は2026年7月時点のものです。制度の運用は変わり得るため、最新情報は記事内の公式リンクからご確認ください。
2026年4月、外食業の特定技能に何が起きたか

まず事実関係を正確に押さえましょう。出入国在留管理庁は、特定技能1号「外食業」分野について、在留者数が受け入れ上限に達する見込みとなったことから、新規受け入れにかかわる申請を原則として認めない措置を開始しました(出典: 出入国在留管理庁「特定技能『外食業分野』における受入れ上限の運用について」)。
いつから、何が止まったのか
措置の起点は2026年4月13日です。この日以降に受理された申請から、海外にいる人材を新たに呼び寄せるための在留資格認定証明書(COE)は原則として交付されなくなりました。また、すでに日本国内に留学などの在留資格で滞在している人が特定技能1号(外食業)へ変更する申請も、原則として許可されません。つまり「海外から新しく呼ぶ」「国内の他の在留資格から外食の特定技能に切り替える」という、新規参入の2つの入口が両方とも閉じられた形です。
一部の申請には経過措置が設けられていました。技能実習(医療・福祉施設給食製造作業)を修了した人からの変更申請と、特定活動(特定技能1号移行準備)からの変更申請は、2026年5月31日受付分までは対象として扱われました。ただしこの経過措置の受付はすでに終了しています(2026年7月時点)。
この2つだけに猶予が設けられたのは、いずれも「すでに外食業の特定技能へ進む前提で準備を進めてきた人」だからです。試験に合格し、移行準備の在留資格まで取得していた人の予定を発表当日にゼロにしてしまうと影響があまりに大きい——そうした配慮の設計であり、裏を返せば、これから新しく準備を始める人に向けた門は明確に閉じられたということでもあります。
申請の種類ごとの扱い
整理すると、現在の扱いは次のとおりです。
申請の種類 | 2026年7月時点の扱い |
|---|---|
在留資格認定証明書の交付(海外からの新規呼び寄せ) | 4月13日以降の受理分は原則不交付 |
他の在留資格からの変更(留学生など) | 4月13日以降の受理分は原則不許可 |
技能実習(給食製造)・移行準備からの変更 | 経過措置(5月31日受付分まで)は終了 |
在留期間の更新(すでに外食業で働いている人) | 引き続き申請可能 |
外食業分野内での転職(勤務先の変更) | 引き続き申請可能 |
出典: 出入国在留管理庁「特定技能1号(外食業分野)の在留諸申請の審査状況」(2026年6月26日掲載)をもとに作成
誰に、どう影響するのか
立場ごとに整理すると、影響を最も強く受けるのは、これから外食業で特定技能人材を新規採用しようとしていた企業です。海外からの呼び寄せも、国内の留学生からの切り替えも原則できなくなったため、「特定技能の新しい人材を迎える」という選択肢は当面使えません。採用計画に特定技能を組み込んでいた場合は、計画自体の見直しが必要になります。
一方で、すでに特定技能人材を雇用している企業への影響は限定的です。在留期間の更新は通常どおり申請できるため、今働いている人が停止措置を理由に働けなくなることはありません。この点は誤解が広がりやすいところなので、後のFAQでも改めて確認します。
そして忘れてはならないのが、海外で準備を進めていた人材本人への影響です。外食業を目指して日本語や技能試験の勉強を重ねてきた人たちは、突然行き先を失いました。この点は記事の後半で改めて触れますが、制度の変更が数字の話だけでなく、一人ひとりの人生の計画に直結していることは、受け入れる側としても心に留めておきたいところです。
なぜ新規受け入れが止まったのか|「受け入れ見込数」の仕組み
次に、今回の措置の背景にある制度の仕組みを見ていきます。ここが分かると、「なぜ外食だけ」「なぜこのタイミングで」という疑問が解けてきます。
特定技能は「上限つき」の制度としてつくられた
特定技能制度は2019年に始まった、人手不足分野で外国人材の就労を認める制度です。政府は制度創設時から、これは移民政策とは異なるという立場を一貫して示してきました。無制限に受け入れるのではなく、対象を人手不足が深刻な特定の分野に限り、分野ごとに「受け入れ見込数」という上限を設けて運用する——この枠組みが制度の土台にあります(制度の概要: 出入国在留管理庁「特定技能制度」)。
受入れ見込数は「向こう5年間でこの分野の人手不足を補うのに必要な人数」として分野ごとに設定され、経済情勢の変化に応じて見直されます。つまり特定技能は、最初から「枠が埋まったら新規は止まる」設計の制度なのです。今回の外食業の停止は、この設計がそのまま発動した、制度上は想定内の出来事だと言えます。
外食業の上限は5万人。そこに約4.6万人まで迫った
外食業分野の受入れ上限は5万人です。出入国在留管理庁の公表によれば、外食業分野の特定技能1号在留者数は2026年2月末時点で約4万6千人(速報値)に達し、このままのペースでは同年5月頃に上限を超えることが見込まれる状況になりました。これを受けて、上限到達前の4月13日というタイミングで新規申請の受け付けにブレーキがかけられたのです(出典: 前掲「受け入れ上限の運用について」、在留者数の統計は出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表等」)。
注目したいのは、枠が埋まった速さです。外食業は特定技能の中でも人気の高い分野で、在留者数はここ数年、想定を上回るペースで増え続けてきました。現場の実感としても、「まさかこんなに早く上限が来るとは」というのが正直なところです。段階的に枠を広げていく可能性も語られていましたが、想定より早い充足がそれを許しませんでした。
「縦割り」が話を複雑にしている
もう一つ、制度を理解するうえで知っておきたいのが所管官庁の構造です。在留資格の許可・不許可を判断するのは法務省の出入国在留管理庁ですが、分野ごとの運用方針——受け入れ見込数を何人にするか、どんな要件で受け入れるか——を決めるのは、その分野を所管する省庁です。外食業と飲食料品製造業は農林水産省、介護は厚生労働省、建設は国土交通省、というように分野ごとに担当が分かれています。
つまり「外食業の枠をどうするか」は、入管庁だけで決められる話ではなく、農林水産省の分野別運用方針と政府全体の判断が絡む構造になっています。この縦割りの構造は、分野ごとの実情に合わせた運用ができる利点がある一方で、上限の見直しのような分野横断の判断に時間がかかりやすい面もあります。再開時期を考えるときにも、この構造が関わってきます。

停止後も引き続きできること
「外食業の特定技能は全部ダメになった」というのは誤解です。停止されたのはあくまで新規の入口であり、次の2つは引き続き機能しています。
在留期間の更新——今いる人材はそのまま働ける
すでに特定技能1号(外食業)で働いている人材の在留期間更新は、通常どおり申請できます。特定技能1号は通算5年まで在留できる資格ですから、いま雇用している人材には、残りの在留可能期間のあいだ引き続き活躍してもらえます。停止措置を理由に雇い止めや帰国を心配する必要はありません。むしろ、後述するように「いまいる人材」の価値が高まる局面ですので、定着支援にこれまで以上に力を入れる意味が大きくなっています。
更新の実務で押さえておきたいのは、準備の前倒しです。在留期間更新の申請は在留期限の3か月前から受け付けられます。更新には本人の書類だけでなく、受け入れ企業側の決算書類や納税証明、支援計画の実施状況など、そろえるものが少なくありません。期限ぎりぎりに慌てないよう、対象人材の在留期限を一覧にして、3か月前になったら着手する——このリズムを社内か登録支援機関との間で決めておくと安心です。制度全体の書類や手続きの流れは特定技能でネパール人材を採用する全手順で整理しています。
外食業分野内での転職——国内転職市場は動き続ける
もう一つ重要なのが、外食業分野内での転職(所属機関の変更)は引き続き認められているという点です。つまり、いまA社で働いている特定技能人材がB社に移ることは、これまでどおり可能です。新規の供給が止まったまま国内の転職だけが動くということは、外食業の特定技能人材の獲得が、限られた約5万人のパイをめぐる国内での競争に移行することを意味します。
転職者を受け入れる側の企業にも、手続き上の準備が要ります。特定技能人材を受け入れるには、受け入れ企業(所属機関)としての基準を満たし、雇用条件書や支援計画を整えたうえで在留資格変更の申請を行う必要があり、審査には一定の期間がかかります。「良い人に出会ってから慌てて調べる」のではなく、外食業の特定技能人材を今後も戦力として考えるなら、受け入れ態勢そのものを先に整えておく——それが競争環境で確実に効く準備です。こうした環境で企業が具体的にどう動くべきかは、この記事の役割を超えるため、まとめの「次に読むべき記事」で紹介する姉妹記事に譲ります。
再開はいつか・今後の見通し
気になる再開時期ですが、まず確定情報からお伝えすると、出入国在留管理庁の公式発表には再開時期の明記はありません(2026年7月時点)。そのうえで、見通しを考える材料は2つあります。
1つ目は、受入れ見込数の期間構造です。現在の受入れ見込数は2024年度から2028年度までの5年間を対象に設定されたものです。この枠が実質的に使い切られた以上、次の大きな見直しのタイミングは、現在の期間が終わる2029年度に向けた再設定になるという見方が業界では一般的です。報道でも、外食業の停止期間は2029年3月末までの約3年間に及ぶ可能性が指摘されており、他分野で想定される停止期間より長期になるとの見立てが出ています。
2つ目は、政策環境です。外国人受け入れをめぐる世論や政治状況は、ここ数年で敏感さを増しています。「上限に達したから枠を広げる」という判断は、制度の建て付け上は可能でも、政治的には慎重にならざるを得ない局面が続いています。人手不足の現場感覚と受け入れ抑制の空気、この2つの力のあいだで判断が揺れる状態は、当面続くと見ておいたほうがよいでしょう。
もう一つ、見落とされがちなのが人材の供給側の変化です。停止が長引くほど、外食業を目指していた海外の人材は介護や宿泊など他の分野へ進路を切り替えていきます。仮に数年後に受け入れが再開されても、そのとき外食業を志望する人材の層が今と同じである保証はありません。「再開すれば元どおり」ではなく、再開後の採用競争は今より厳しくなっている可能性も含めて、長い目で人材戦略を考えておく価値があります。
企業の実務としては、「早期再開に期待して待つ」のではなく、「3年程度は新規が止まる前提」で採用計画を組み直すことをおすすめします。悲観する必要はありませんが、楽観に賭けるには材料が足りない、というのが率直な見立てです。
あわせて、情報のアンテナの張り方も決めておきましょう。運用の変更は出入国在留管理庁のウェブサイトでの掲載が起点になります。本記事で引用している「在留諸申請の審査状況」のページは随時更新されるため、外食業の特定技能に関わる企業はブックマークしておく価値があります。取引のある紹介会社や登録支援機関がいる場合は、「運用に動きがあったら知らせてほしい」と一言頼んでおくのも実用的です。制度の変わり目は、正確な情報をどれだけ早くつかめるかで打ち手の質が変わります。

外食企業が今できる備え
詳細は姉妹記事に譲りますが、方向性だけ整理しておきます。
いまいる特定技能人材の定着に投資する: 更新は引き続き可能。転職市場化が進むほど、既存人材の定着価値は上がります。待遇の見直しだけでなく、キャリアの見通しや生活面の支援まで含めた「辞める理由のない職場」づくりが軸になります
国内転職市場での受け入れ態勢を整える: 外食業内の転職は動き続けるため、「選ばれる職場」の条件整備が採用力に直結します。受け入れ企業としての基準充足や支援体制を先に整えておけば、良い出会いがあったときにすぐ動けます
特定技能以外の採用ルートを検討する: 留学生アルバイト、専門人材、そして2027年に始まる育成就労を見据えた中長期の設計など、選択肢は残されています。自社の店舗運営に合うルートの見極めが最初の一歩です
それぞれのルートの要件や向き不向きは、姉妹記事「外食業の外国人採用はこれからどうなる」(まとめの「次に読むべき記事」からご覧いただけます)で具体的に解説しています。また、特定技能制度そのものの全体像は特定技能でネパール人材を採用する全手順をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. いま雇っている特定技能の外国人スタッフは、働き続けられますか?
はい、働き続けられます。今回停止されたのは新規の受け入れ(海外からの呼び寄せと他資格からの変更)であり、すでに外食業で働いている特定技能1号の方の在留期間更新は通常どおり申請できます。特定技能1号の上限である通算5年までは、これまでどおり雇用を継続できます。
Q2. 在留期間の更新も、いずれ止まってしまう可能性はありますか?
公式発表の範囲では、更新は停止の対象になっていません。今回の措置はあくまで「新しく外食業の特定技能人材を増やすこと」を止めるものであり、すでに枠の中に入っている人材の在留を切り崩すものではないためです。更新まで止めてしまうと、すでに日本で生活基盤を築いている人の在留が突然絶たれることになり、制度の趣旨からも考えにくい措置と言えます。ただし制度運用は変わり得るため、更新時期が近い人材がいる場合は、余裕をもって申請準備を進めることをおすすめします。
Q3. 他の分野(飲食料品製造業など)も止まるのでしょうか?
分野ごとに在留者数と上限の距離は異なります。外食業の停止をきっかけに、充足率の高い他分野の動向にも注目が集まっており、同様の措置が他分野に広がる可能性はゼロではありません。採用を検討している分野があれば、出入国在留管理庁が公表する特定技能在留外国人数の統計で、その分野の充足状況を確認しておくとよいでしょう。統計は四半期ごとに更新されるため、採用計画を立てる際の定点観測に使えます。「まだ枠に余裕があるから大丈夫」ではなく、「枠が埋まる前に動く」という時間感覚を持っておくことが、外食業の停止から学べる実務上の教訓です。
Q4. 外食業で働きたかった海外の人材は、どうなるのですか?
行き先の変更を迫られています。実際、当社のネパールの学校でも、外食業を目指して1年以上日本語を学んできた学生が、今回の停止で入国できなくなりました。特定技能は分野ごとに試験が分かれているため、「外食がダメなら建設へ」と簡単に移れるわけではなく、別分野の試験を受け直す必要があります。介護や宿泊など、日本語力を活かせる別分野への挑戦し直しが、現実的な選択肢になっていくでしょう。日本で働くことを夢見て努力してきた人たちにこうした影響が出ていることは、受け入れ側の企業の皆さまにもぜひ知っておいていただきたい現実です。
Q5. 停止直前(4月12日まで)に申請していた分はどうなりますか?
2026年4月12日までに受理された在留資格変更許可申請は、停止措置の対象外として通常どおり審査されます。すでに申請済みの案件があれば、取り下げる必要はありません。ただし審査の結果は個別判断ですので、許可を前提に入社日などを確定させず、審査状況を確認しながら進めてください。自社の申請がどの扱いに当たるか判断がつかない場合は、申請を担当した行政書士や登録支援機関に確認するのが確実です。
Q6. 「受け入れ見込数」は誰がどうやって決めているのですか?
分野を所管する省庁(外食業は農林水産省)が業界の人手不足の状況を推計し、政府全体の方針として閣議決定で定めます。「向こう5年間で不足が見込まれる人数」を上限とする建て付けで、経済情勢に応じて見直されてきました。在留資格の審査を行う出入国在留管理庁とは役割が分かれており、この分業構造が、上限見直しの判断に時間がかかりやすい一因にもなっています。
まとめ
2026年4月13日以降、特定技能1号「外食業」は海外からの新規呼び寄せ(COE交付)と他資格からの変更が原則停止。経過措置も5月31日受付分で終了した
理由は受け入れ上限(5万人)への到達見込み。2026年2月末時点で約4.6万人に達していた。特定技能はもともと「枠が埋まったら止まる」設計の制度
在留期間の更新と外食業内の転職は引き続き可能。いまいる人材の雇用継続に支障はない
再開時期の公式発表はなし。受け入れ見込数の期間構造からは、2029年度の再設定まで停止が続くとの見方が有力
これからの外食業の外国人採用は「限られたパイの獲得競争」へ。選ばれる職場づくりと代替ルートの検討が備えになる
次に読むべき記事:
制度の変化は、採用を見直す機会でもあります
今回の停止措置は、外食業の採用計画に確かに影響を与えました。ただ、仕組みを分解してみると「制度の設計どおりに枠が埋まった」という出来事であり、外国人材の受け入れそのものが否定されたわけではありません。むしろ、新規供給が絞られたことで、いまいる人材を大切にする企業と、そうでない企業の差がこれまで以上にはっきり表れる局面に入ったと私たちは捉えています。
私たちG-Star HR Linkは、外食業を含む各分野の人材紹介と定着支援を通じて、制度の動きを現場の実務レベルで追い続けています。「うちの場合はどう影響するのか」「次にどの採用ルートを検討すべきか」といった個別のご相談も、状況の整理からお手伝いできます。まずは自社の状況を知りたい、という段階のご相談も歓迎しています。