「もっと残業したい」と言われたら|外国人材の給与設計と36協定の線引き

「もっと残業したい」と言われたら|外国人材の給与設計と36協定の線引き

「もっと残業したいです」——当社代表の岡本が、特定技能外国人との面談で実際に受けた相談です。

本人にその希望があっても、「希望するだけ働いてもらっていい」とは限りません。


結論から言えば、本人の同意だけで労働時間の上限を超えて働かせることはできません。
特定技能外国人にも、原則として日本人と同様に労働基準法が適用されます。
法定労働時間は原則として1日8時間・週40時間で、これを超えて働かせるには36協定が必要です。


したがって、同意書を書いてもらえば残業を増やせる、という考え方はできません。
企業側は法定の上限と割増賃金を守ったうえで、本人が「もっと稼ぎたい」と考える背景にも目を向ける必要があります。

この記事では、36協定と残業代の基本を確認しながら、残業を増やす以外に手取りをどう設計できるかを整理します。


私たちG-Star HR Linkは、静岡県浜松市でネパール人材の紹介・受け入れ支援を行っています。
ネパール現地の日本語学校・トレーニングセンターから、在留資格申請、入社後の定着支援まで一貫して対応。登録支援機関(25登-011561)として、外国人材の給与や待遇を考える企業の視点から、実務に役立つ情報をお届けします。

「もっと残業したい」と言われたら?企業が取るべき対応

日本の工場の休憩スペースで、ネパール人の作業者が日本人の現場責任者に労働時間について相談している場面

「もっと残業させてほしい」と言われたとき、企業はどう答えればよいのでしょうか。


「わかりました、増やしましょう」とは簡単に答えられません。
本人が希望しても、労働時間の上限は本人の同意だけで変更できないからです。


一方、「制度上できません」と説明して終わるのも十分ではありません。
特定技能は、一定の条件のもとで同一の業務区分内などで転職できるため、収入への不満が離職につながる可能性もあります。

だからこそ、上限を説明したうえで、「では、何ができるのか」まで一緒に考えることが大切です。

「本人が望んでいるから」は、監督指導では通用しない

厚生労働省が令和7年9月に公表した令和6年の監督指導結果によると、特定技能外国人を使用する事業場では、監督指導を行った5,750事業場のうち4,395事業場(76.4%)で労働基準関係法令違反が認められました。

主な違反事項は、次のとおりです。

  1. 使用する機械等の安全基準:24.0%

  2.  割増賃金の支払:17.2%

  3. 健康診断結果についての医師等からの意見聴取:16.7%

この中で、残業を考える企業が特に注意したいのが、「割増賃金の支払」です。
違反事項の2番目に多く、特定技能外国人を受け入れる企業にとっても見過ごせない項目です。

技能実習でも、11,355事業場の73.2%で違反が確認され、「割増賃金の支払」は15.6%で2番目でした(出典: 厚生労働省「外国人技能実習生又は特定技能外国人を使用する事業場に対して行った令和6年の監督指導、送検等の状況を公表します」

ここで注意したいのは、残業代の問題は必ずしも悪意から起こるとは限らないことです。
「本人がもっと働きたいと言った」「繁忙期だから」といった事情があっても、法令上のルールが変わるわけではありません。

だからこそ、本人の希望と企業が守るべき労働時間・割増賃金のルールを分けて考えることが重要です。

なぜ本人が残業を望むのか|手取りと仕送りの構造

日本の小さなアパートの一室で、ネパール人の若者がスマートフォンで母国の家族とビデオ通話をしている夜の情景

仕送りをしている人の割合は、在留資格で大きく違う

外国人材が「もっと働きたい」と希望する背景には、母国への仕送りが関係している場合があります。
厚生労働省の「令和6年外国人雇用実態調査」では、母国の家族などへ仕送りをしている人は全体の54.8%。在留資格別では、技能実習が83.5%、特定技能が81.6%、技術・人文知識・国際業務が45.1%でした。


さらに、仕送りをしている人の年間平均額は、全体で104.3万円。特定技能は123.3万円で、在留資格別では最も高い金額です。
単純に12か月で割ると、月約10.3万円に相当します。


一方、同居する家族全員の手取り収入を見ると、特定技能では「10~19万円」が4割超を占めます。技能実習ではこの割合が7割超です。

ただし、ここでいう「世帯月収」は本人1人の給与ではなく、日本で一緒に暮らす家族全員の手取り額なので、給与水準と直接比較してはいけません。


それでも、特定技能では年間100万円を超える仕送りをしている人が一定数いることは事実です。
仕送りをしている人にとっては、残業による収入の変動が家計や送金額に影響する可能性があります(出典: 厚生労働省「令和6年外国人雇用実態調査の概況」第21表・第22表-1・第22表-3。令和7年8月29日公表、令和6年9月30日現在の状況を同年10〜11月に調査、労働者調査の有効回答11,568人)。


当社が浜松で見ている範囲でも、月10万円前後を母国へ送る人は珍しくありません。
これは公的統計ではなく現場での観察ですが、特定技能の平均年間仕送り額123.3万円(月約10.3万円)とも大きく離れていません。

だからこそ、残業希望を単なる「もっと稼ぎたい」という一言で捉えず、何のために、どの程度の収入を必要としているのかまで確認することが重要です。

送り先は「親、兄弟姉妹」が8割を超える

厚生労働省の調査では、仕送り先(複数回答)は「親、兄弟姉妹」が83.0%で最も多く、「配偶者、子ども」が16.1%。特定技能では「配偶者、子ども」が21.8%と、全体より高くなっています。数字の先には、それぞれの家族がいます。

当社でも、2歳のお子さんを母国に残して来日した方がいました。
「お子さんと離れて寂しくないですか」と聞くと、「テレビ電話で話せるから大丈夫です」と答えてくれました。

仕送りは単なる送金ではなく、家族の生活を支えるお金でもあります(住居や通信の準備は外国人材の受け入れ準備チェックリストで扱っています)。


なお、仕送り先には「日本に来るためにお金を借りたところ」も含まれ、技能実習では6.9%、特定技能では4.0%でした。

送出し費用と借金が定着に与える影響はネパール人は本当に辞めにくいのか|送金責任と借金構造から考える定着が、採用の総コストで見れば外国人材はもう安く雇える労働力ではないという論点は特定技能の採用費用の内訳が扱っています。
本記事はその手前の「毎月の手取りをどう設計するか」に絞ります。

法令の線はどこにあるか|36協定・上限規制・割増賃金

36協定を結んでも、超えられない上限がある(労働基準法36条)

「本人がもっと働きたい」と希望しても、企業が自由に労働時間を増やせるわけではありません。
外国人材も日本人と同じ労働基準法の対象です。
まず押さえたいのが、法定労働時間と36協定の関係です。


① 原則は1日8時間・週40時間
労働基準法32条は、原則として1日8時間、1週間40時間を超えて労働させてはならないと定めています。
これを超えて働かせるには、労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者との36協定を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります(出典:厚生労働省 労働条件に関するルール)。

② 36協定を結んでも無制限ではない
時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間です。1年単位の変形労働時間制で対象期間が3か月を超える場合は、月42時間・年320時間が限度になります(出典:厚生労働省 36協定の適正な締結)。

③ 特別条項にも上限がある
臨時的な特別の事情がある場合は、36協定に特別条項を設けることで、この限度時間を超える時間外労働が可能です。ただし、次の上限があります。

  • 時間外労働+休日労働は、1か月100時間未満

  • 時間外労働は、年720時間以内

  • 月45時間(変形労働時間制では42時間)を超えられるのは、年6か月以内

  • 直前2~6か月の各期間について、時間外労働+休日労働の月平均は80時間以内

特に「100時間未満」と「2~6か月平均80時間以内」は、休日労働も合算して判断します。


つまり、本人が希望した、同意書に署名した、繁忙期だったという事情だけで、この上限を超えて働かせることはできません。
36協定は「残業を無制限に認める仕組み」ではなく、法定労働時間を超えて働かせるための手続と、その範囲を定める仕組みです。

さらに、時間外労働には原則25%以上、法定休日労働には35%以上の割増賃金が必要で、月60時間を超える時間外労働には50%以上の割増率が適用されます。


したがって企業が考えるべきなのは、「本人が望むからどこまで働かせられるか」ではなく、法定上限と36協定の範囲内で、どうすれば本人の収入希望に応えられるかです。

割増賃金の率|残業が増えるほどコストも上がる

労働基準法37条などでは、時間外・休日・深夜労働について、通常の賃金に一定以上の割増を加えることが定められています。

  • 時間外労働: 25%以上(37条1項+政令)

  • 1か月60時間を超える時間外労働: 50%以上(37条1項ただし書)

  • 法定休日の労働: 35%以上(37条1項+政令)

  • 深夜労働(午後10時〜午前5時): 25%以上(37条4項)。時間外労働と重なれば合算します

なお、月60時間を超える時間外労働については、かつて中小企業への適用猶予がありましたが、2023年4月1日から全企業に50%以上の割増率が適用されています。

つまり、月60時間を超える時間外労働では、通常の賃金の1.5倍以上が必要です。

「残業で稼がせてあげる」という設計は、本人の収入だけでなく、企業側の人件費も大きくなることまで考えておく必要があります。

外国人だからという理由での差は、そもそも禁止(労働基準法3条)

労働基準法3条は、使用者が労働者の国籍、信条または社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について差別的に扱うことを禁止しています。

外国人労働者についても、日本人と同様に労働関係法令が適用されます。


さらに厚生労働省の「外国人雇用管理指針」は、賃金を説明する際、賃金の決定・計算・支払方法だけでなく、税金、雇用保険・社会保険料、労使協定による賃金控除についても、本人が理解できるよう説明し、実際に支給される額が明らかになるよう努めることを求めています。

つまり給与テーブルを示すだけでなく、「最終的にいくら受け取れるのか」まで説明することが重要です。

有期契約の特定技能も「同一労働同一賃金」の対象になる

特定技能1号は在留期間に通算上限があるため、有期の労働契約を結ぶケースがあります。

ただし、特定技能だから特別な待遇ルールがあるわけではありません
有期雇用労働者であれば、パート・有期雇用労働法の対象となり、通常の労働者との不合理な待遇差が禁止されます。

同法8条は、基本給・賞与・手当など、それぞれの待遇について、職務内容や配置変更の範囲、その他の事情を考慮して、不合理な相違を設けることを禁止しています。職務内容と配置変更の範囲が通常の労働者と同じ場合は、9条により差別的取扱いも禁止されます。

特に見落としやすいのが割増賃金の上乗せです。

ガイドラインでは、正社員と同じ時間外労働をした有期雇用労働者には、通常の労働者と同じ割増率で時間外労働手当を支給する必要があるとされています。深夜・休日労働についても同様です。

したがって、正社員だけに法定を上回る割増率を設定しているなら、有期雇用の特定技能にも同じ率を適用できるか、待遇差の合理性を確認する必要があります。

改正同一労働同一賃金ガイドラインは令和8年(2026年)4月28日に公布され、令和8年10月1日から適用されます(出典: 厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」)。


また外国人雇用管理指針も令和8年5月29日に改正され(厚生労働省告示第227号)、短時間・有期雇用労働者または派遣労働者である外国人労働者は同ガイドラインの適用を受けることに留意すべき旨が明記されました

この部分は2026年6月14日から適用されています(出典: 厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」)。

特定技能には、給与を決める際のもう一段の基準がある

特定技能では、外国人の報酬額を同等の業務に従事する日本人の報酬額と同等以上にすることが求められます。
根拠の省令条文は特定技能の採用費用の内訳で扱っています。

入管庁の2026年4月1日版の運用要領では、給与テーブルを作る際に特に確認したいポイントが2つあります。

  1. 「報酬」に含まれる手当を確認する
    運用要領では、「報酬」を一定の役務の対価として与えられる反対給付としたうえで、通勤手当や扶養手当、住宅手当などのうち、実費弁償の性格を持つものは、原則として「報酬」に含まれません。
    つまり、住宅手当などを付けるだけでは、同等報酬の比較額を満たす材料にならない場合があります。

  2. 技能実習から移行する場合は、経験年数を踏まえる
    技能実習2号修了者はおおむね3年、3号修了者はおおむね5年の経験者として扱う必要があります。
    そのため、技能実習2号修了時の給与を上回るだけでなく、実際に3年程度または5年程度の経験を積んだ日本人技能者の報酬額とも比較して、適切に設定することが求められます。

なお、この説明は申請時に「特定技能外国人の報酬に関する説明書」として提出します(特定技能の必要書類と申請手続きの流れ)。

ネパール人材の採用、まずは現状をお聞かせください

ネパール現地に自社の日本語学校・トレーニングセンターを持つ G-Star HR Link が、
貴社のご要望に合わせ、最適な在留資格とスケジュールを無料相談でご提案します。

30分の無料相談を申し込む →

残業を増やす以外の設計|手当・昇給ルール・住宅補助・シフトの組み方

日本の事務所で、日本人の人事担当がホワイトボードの前に立ち賃金体系を組み立てている場面

まず測る|「残業がゼロだった月の手取り」を出してみる

同じ調査は、事業所調査で在留資格別の賃金と労働時間も集計しています。一般労働者の数字を並べます。

在留資格

きまって支給する
現金給与額

所定内給与額

差額
(=超過労働給与額)

所定内
実労働時間

超過
実労働時間

外国人常用労働者計

274.9千円

242.0千円

32.9千円

157.1時間

17.5時間

うち特定技能

250.3千円

213.0千円

37.3千円

160.2時間

21.3時間

技能実習

210.0千円

177.6千円

32.4千円

163.8時間

21.6時間

うち技術・人文知識・国際業務

311.2千円

278.3千円

32.9千円

156.8時間

15.0時間

身分に基づくもの

305.2千円

272.6千円

32.6千円

150.8時間

15.5時間

出典: 前掲「令和6年外国人雇用実態調査の概況」第4表(一般労働者)。令和6年9月分の給与額および同月の実労働時間。同調査の定義で「所定内給与額」は「きまって支給する現金給与額」から超過労働給与額(時間外・深夜・休日出勤・宿日直・交替の各手当)を差し引いた額。差額欄はこの定義に基づきG-Star HR Linkが算出。

読み取れるポイントは2つあります。第一に、超過実労働時間の長さです。特定技能は月21.3時間で、技術・人文知識・国際業務の15.0時間を6.3時間上回ります。第二に、給与に占める超過労働給与額の大きさです。特定技能は、きまって支給する現金給与額25万300円に対し、所定内給与額は21万3,000円。その差は3万7,300円で、約14.9%に相当します。

つまり、時間外・深夜・休日出勤などの超過労働がなくなれば、平均では額面で約3万7,000円下がる計算です。仕送りなど毎月の支出がある人にとっては小さくない金額でしょう。まず自社の給与明細で、基本給・固定手当と時間外手当を分けて確認してみてください(出典:厚生労働省 令和6年外国人雇用実態調査の概況)。

  1. 恒常的な残業に頼らない給与設計にする
    恒常的に発生している残業分をそのまま収入の前提にするのではなく、基本給や固定手当を含めた給与体系を見直します。特定技能の同等報酬要件では、基本給などの「報酬」が比較対象になるため、所定内給与を適切に設定することが重要です。まずは過去1年の残業実績を確認し、実際の働き方に合った給与水準を検討しましょう。

  2. 昇給の条件と金額を先に示す
    「頑張れば昇給する」ではなく、何ができるようになれば、いつ、いくら上がるのかを具体化します。特に技能実習2号修了者は、おおむね3年程度の経験者として報酬を設定する必要があります。日本人の同程度の経験者との比較も踏まえ、技能検定や社内認定、担当できる工程など、本人が成長を確認できる基準を設けるとよいでしょう(製造業での運用は製造業の外国人採用でも触れています)。

  3. 住宅補助・家族手当を「日本人だけ」にしない
    住宅補助や家族手当は、外国人だからという理由だけで対象外にするのではなく、正社員との待遇差を確認しましょう。正社員に法定を上回る割増率を設定している場合、有期雇用の特定技能外国人にも同じ率を適用する必要があるか、待遇差の合理性を確認しましょう。さらに2026年10月1日から適用される改正版では、家族手当や住宅手当についても具体的な考え方が追加されます。

    一方、住宅手当などを増やせば、特定技能の「日本人と同等額以上の報酬」という要件を満たせる、という意味ではありません。
    実費弁償の性格を持つ手当は、報酬の比較対象から除かれる場合があります。
    基本給などで報酬水準を確保し、手当は待遇差の是正という別の観点から設計することが重要です。

  4. シフトは「増やす」より「凹ませない」
    残業を増やせないなら、月による収入の振れ幅を小さくする方法も考えられます。ただし、特定技能では所定労働時間が通常の労働者と同等であることが必要です。
    フルタイムとは、原則として週5日以上、年間217日以上、かつ週30時間以上を満たす働き方を指します。

    そのため、特定技能だけ所定労働時間を大幅に短くして収入を調整する、といった設計はできません。
    変形労働時間制を利用する場合も、労働時間規制との関係を確認する必要があります。
    特に1年単位の変形労働時間制では、36協定の時間外労働の限度が月42時間・年320時間となるため、シフトを組む段階から織り込んでおきましょう。

    職場の受け入れ体制まで含めた定着の話は外国人材が定着する会社の共通点で扱っています。

方法

手取りへの効き方

特定技能の「報酬」に算入されるか

主な制約

基本給を上げる

毎月確実に増える

算入される

既存従業員との給与バランス、引下げには労働条件変更上の制約がある

昇給ルールを金額と条件で提示

将来の増加が見通せる

昇給後の基本給は算入される

経験年数や技能を踏まえ、日本人の同程度の経験者との比較が必要

住宅補助・社宅・各種手当

支出が減るぶん可処分が増える

実費弁償の性格のものは算入されない

正社員との待遇差について確認が必要

シフト・時間外の配分を平準化

月ごとの振れ幅が小さくなる

所定労働時間の同等性で別途判定

所定労働時間は通常の労働者と同等。1年単位の変形労働時間制では36協定の限度時間にも注意

出典: G-Star HR Link作成。「報酬」への算入と所定労働時間の要件は出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」(2026年4月1日版)、手当は前掲の同一労働同一賃金ガイドライン、限度時間は労働基準法36条4項による。

よくある質問(FAQ)

Q1. 本人が「残業したい」と書面で同意すれば、上限を超えて働かせてもよいですか?

A.できません。労働時間の上限は、本人の希望や同意だけで緩められるものではありません。
36協定や特別条項を設けた場合でも、時間外労働と休日労働には上限があります。

特に、月100時間未満、複数月平均80時間以内という規制は守る必要があり、違反には罰則があります。
「本人が希望したから」は免責の理由になりません。

Q2. 固定残業代を厚く設定すれば、収入を安定させられますか?

A.方法の一つではありますが、注意が必要です。
実際の時間外労働が固定残業代に含まれる時間を超えた場合、その超過分の割増賃金を別途支払わなければなりません。
固定残業代を設定しただけで追加支払いが不要になるわけではありません。
収入を安定させるなら、基本給を含む所定内給与を見直すほうが分かりやすい設計です。

Q3.  外国人材にだけ手当を付けて手取りを上げるのは、問題になりませんか?

A.注意が必要です。労働基準法3条は、国籍を理由とした賃金などの差別的取扱いを禁止しています。
手当を設けるなら、「外国人だから」ではなく、住宅の状況、通勤距離、担当工程、資格の有無など、客観的な支給要件で設計しましょう。
国籍そのものを支給条件にしないことがポイントです。

Q4.割増率を法定どおり払っていれば、待遇差の問題はありませんか?

A.割増賃金の最低基準を満たしていても、同一労働同一賃金の問題は別に残ります。
たとえば正社員に法定を上回る時間外割増率を適用している場合、有期雇用の外国人材だけ法定率にすることは、待遇差として合理的な説明が必要になる可能性があります。
賃金規程で、どの雇用区分にどの割増率を適用しているか確認しておきましょう。

まとめ

  • 本人の希望でも、労働時間の上限は変わらない
    36協定の限度時間は原則「月45時間・年360時間」。特別条項があっても、月100時間未満・年720時間以内・複数月平均80時間以内などの上限がある。

  •  残業を増やすほど、人件費も増える
    時間外25%以上、月60時間超は50%以上、法定休日35%以上、深夜25%以上の割増が必要。中小企業への月60時間超50%割増の猶予も終了。

  • 残業を求める背景には、仕送りと手取りの問題がある
    特定技能では81.6%が仕送りをしており、年間平均は123.3万円。単純換算で月約10.3万円です。残業による収入が減れば、家族への送金にも影響する。

  •  残業以外で手取りを安定させる設計を考える
    基本給への振り替え、昇給ルールの明確化、待遇差の是正、時間外労働の平準化などが考えられる。なお、住宅手当などは特定技能の「報酬」の代わりにはならない。

次に読むべき記事:

賃金の話は、遠慮するより先に「構造」を共有する

お金の話は切り出しにくいものですが、母国へ継続的に仕送りをする外国人材にとって、賃金は生活を支える重要な条件です。
労働時間の上限、割増率、今後の昇給条件と金額。この3つを最初に共有しておけば、残業への認識違いも減らせます。

自社の給与テーブルが特定技能の要件を満たしているか、残業に頼らない給与設計にできるか。
給与明細と求人票をもとに、一緒に整理してみませんか。

来日前の教育から浜松での定着支援まで、一貫して支援しているからこそ分かる現場の視点でご説明します。
検討の初期段階でも構いませんので、お問い合わせからお気軽にお声がけください。