ネパール人の宗教と食事対応|「牛は食べないが水牛は食べる」現場の実務

ネパール人の宗教と食事対応|「牛は食べないが水牛は食べる」現場の実務

ネパール人材の採用を検討し始めた企業から、繰り返し受ける質問があります。「ネパールの人は牛肉が食べられないんですよね?」「お祈りの時間を業務中に確保しないといけませんか」「そもそも、面接で宗教のことを聞いていいんでしょうか」。どれも当然の心配だと思います。食堂の献立、寮の設備、歓迎会の店選び——宗教と食事の話は、抽象的な「多様性」の議論ではなく、明日の段取りに直結する実務だからです。

先に結論をお伝えします。「ネパール人=ヒンドゥー教徒=牛肉がダメ」という等式は、現場ではほとんど役に立ちません。統計上ヒンドゥー教徒が8割を超えるのは事実ですが、その数字から目の前の一人が何を食べられるかは分かりません。実際、当社で働くネパール人スタッフはたまたま全員が仏教徒で、先日は全員そろって焼肉の食べ放題に行きました。カテゴリで決めつけず、本人に確かめる。これが唯一の答えです。ただし「何を・いつ・どの立場で聞くか」には法令上の明確な線引きがあり、ここを外すと良かれと思った質問が就職差別につながりかねません。

この記事を書いているG-Star HR Link(静岡県浜松市)は、ネパール現地に自社の日本語学校とトレーニングセンターを持つ人材紹介会社です。代表の岡本はベトナムでの日本語学校設立や監理団体の運営を経て、数百人の外国人材と面談してきました。本記事は、その実務経験と、厚生労働省が示す指針・告示の原文の両方に基づいています。制度面はネパール人採用の基本ガイドで解説しています。

ネパール人の宗教構成——「ヒンドゥー教徒が8割超」という数字が語らないこと

ネパールの街角の寺院と、その前を行き交う人々の日常

まず事実関係を押さえます。ただしこの節の数字は、受け入れ実務の役にはほとんど立ちません。なぜ立たないのかを理解することが、いちばん大事な準備になります。

公的統計で見るネパールの宗教

宗教割合
ヒンドゥー教81.2%
仏教8.2%
イスラム教5.1%
その他上記以外(キラート、キリスト教など)

出典: 外務省「ネパール基礎データ」(2026年7月14日更新)。同ページの民族・言語の記載はネパール国勢調査(2021年)に基づくもので、宗教の数値もネパール国家統計局「National Population and Housing Census 2021」の結果と一致します。

細かい点ですが、ネパールのヒンドゥー教徒を「約7割」と紹介している記事や資料を見かけます。公的統計に当たると8割を超えており、7割は実態とずれています。宗教のような繊細な話題ほど、伝聞ではなく一次情報に当たる価値があります。

この数字から、目の前の一人のことは何も分からない

「ヒンドゥー教徒が81.2%」は、「採用候補者が81.2%の確率で牛肉を食べられない」という意味ではありません。理由は2つ。

ひとつは、ネパールが極端に多様な国だということ。外務省の同じデータによれば、人口およそ2,965万人(2024年、世界銀行)に対し、142のカースト・エスニックグループと124の言語グループがあります(多様性が人物像にどう表れるかはネパール人の国民性と性格で扱っています)。

もうひとつは、信仰の強さが人によってまったく違うこと。同じ宗教を信じていると答えた二人でも、片方は戒律を厳格に守り、もう片方はほとんど気にしない、ということが普通に起こります。これは統計には表れません。国の宗教構成は文化的背景を知るには役立ちますが、「この人と一緒に働けるか」を判断する材料にはならないのです。

そもそも「宗教」の捉え方が、日本とはかなり違う

日本では「宗教」という言葉に身構える人が少なくありません。一方で、初詣に行き、七五三を祝い、お盆に墓参りをする。これらを宗教行為と思わないのは、生活に溶けて文化になっているからです。ネパールでも同じことが起きています。当社のスタッフに、業務中に時間を割いてお祈りをする習慣はありません。ただ、お寺に行くのは好きな人が多い。日本人がパワースポットを訪ねる感覚に近い、習慣の領域です。「信仰を持っている」ことと「業務に支障が出るほどの制約がある」ことは、別の話なのです。

「牛は食べないが水牛は食べる」——ネパール人と牛肉の実際

食堂のトレーに並ぶ多様な料理——本人が選べる食事の情景

カウ(牛)とバッファロー(水牛)は、別のもの

ヒンドゥー教で牛が神聖視されるのは広く知られています。ただ、日本語の「牛肉」という一語が誤解のもとになります。英語で言うカウ(cow)は食べませんが、バッファロー(水牛)は食べるからです。ネパールでは水牛の肉は日常的な食材で、「牛肉がダメ」と聞いて水牛料理まで避ける必要はありません。

牛乳も牛脂も、日常的に使う

社員食堂や仕出し弁当を用意する企業には、ここが実務的に重要です。牛乳は普通に飲みますし、牛の油も調理に使います。乳製品も同様です。「牛由来の成分がひとつでも入っていたら食べられない」という前提で献立を組み直す必要はありません。この点は、豚由来の成分全般を避ける方がいるイスラム教とは事情が異なります。「外国人の食事対応」とひとくくりにしないことが大切です。

「食べない」と「触れない」は、まったく別の話

この区別が、採用の可否を分けることがあります。牛肉を食べないネパール人材でも、牛肉に触れること、調理することは問題ない人が多数です。「ヒンドゥー教徒だから牛肉のラインには入れない」と早合点して候補から外すのは、企業にとっても本人にとっても損失です。ただし、味見が必要な工程は別で、そこは「触れる」だけでは足りません。だからこそ確認すべきは宗教ではなく、その業務で具体的に何をするのかです。

何を、いつ、どう確認するのか——採用選考で宗教を尋ねてはいけない理由

「人によるなら、本人に聞けばいい」——そのとおりなのですが、採用選考の場で企業が応募者に宗教を尋ねることは、公正な採用選考の考え方に反します。これを知らずに面接で聞いてしまう企業は少なくありません。

宗教は「本来自由であるべき事項」——厚生労働省が示す考え方

厚生労働省は、公正な採用選考の基本を「応募者に広く門戸を開くこと」と「本人のもつ適性・能力以外のことを採用基準にしないこと」の2点に整理しています。そのうえで就職差別につながるおそれがある事項を挙げており、そこに「本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)の把握」という分類があります。「宗教に関すること」は、この分類の筆頭です。「参考に聞くだけだ」という言い分も通りません。

適性・能力に関係のない事項は、それを採用基準としないつもりでも、応募用紙に記載させたり面接時にたずねたりすれば、その内容は結果としてどうしても採否決定に影響を与えることとなり、就職差別につながるおそれがあります。

出典: 厚生労働省「公正な採用選考の基本」同「採用選考時に配慮すべき事項」(公正採用選考特設サイト)

求人企業も、法令上の名宛人になっている

これは啓発上のお願いにとどまりません。職業安定法に基づく告示(平成11年労働省告示第141号)は、求職者等の個人情報の取扱いについて次のように定めています。

職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、特定募集情報等提供事業者、労働者供給事業者及び労働者供給を受けようとする者は、その業務の目的の達成に必要な範囲内で、当該目的を明らかにして個人情報を収集することとし、次に掲げる個人情報を収集してはならないこと。ただし、特別な職業上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合はこの限りでないこと。
イ 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項
ロ 思想及び信条
ハ 労働組合への加入状況

出典: 厚生労働省「職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、募集情報等提供事業を行う者、労働者供給事業者、労働者供給を受けようとする者等がその責務等に関して適切に対処するための指針」(平成11年労働省告示第141号)第五の一(二)

名宛人に「求人者」が明記されている点に注目してください。紹介会社だけのルールではなく、採用する企業そのものが対象です。そして「ロ 思想及び信条」には、宗教的な信条が含まれます。あわせて外国人雇用管理指針も、「事業主は、外国人労働者について、在留資格の範囲内で、外国人労働者がその有する能力を有効に発揮できるよう、公平な採用選考に努めること」と定めています。外国人への配慮を求めるその同じ指針が、公平な採用選考も求めているわけです。

なお、上の告示には「ただし」以下の例外がありますが、①特別な職業上の必要性があり、②収集目的を示して、③本人から収集する、の3条件をすべて満たす場合に限られます。そして実務では、この例外に頼る必要はまずありません。企業が本当に知りたいのは「宗教」ではなく「この業務ができるかどうか」だからです。業務内容を尋ねれば足りるなら、宗教の情報は「業務の目的の達成に必要不可欠」とは言えなくなり、例外の条件自体が成り立ちません。

「本人が気を悪くしないか」と「企業が聞いてよいか」は、別の問題

ここで混同が起きやすいので補足します。実際にネパールをはじめとする国々の方と接していると、宗教について尋ねられること自体を失礼だと感じる人は、日本人が想像するほど多くありません。彼らにとって宗教は隠すものではなく、自然な自己紹介の一部です。ただし、「本人が気を悪くしない」ことと「企業が採用選考の場で聞いてよい」ことは、まったく別の問題です。前者は文化の話、後者は法令の話で、前者が成り立っていても後者の答えは変わりません。公正な採用選考の考え方は、応募者が気を悪くするかどうかではなく、その情報が採否の判断に紛れ込むことを問題にしているからです。「本人は嫌がらなかったから大丈夫」は、通らない理屈だとお考えください。

聞くべきなのは「宗教」ではなく「業務」

では、どうすればよいのか。答えはシンプルで、質問の向きを変えます。宗教を尋ねるのではなく、業務内容を具体的に説明して、その業務を行えるかどうかを本人に確認する。これだけです。

  • ×「あなたの宗教は何ですか」「牛肉は食べられますか」(信条の把握につながる質問)
  • ○「この仕事では調理の工程で牛肉を扱い、味の確認をしていただく場面があります。問題なく担当できますか」(業務内容の説明と、遂行可否の確認)

後者は適性・能力に関する質問で、宗教は尋ねていません。本人が「できません」と答えたとき、その理由が宗教なのか、体質なのか、単に苦手なのかを企業が知る必要はありませんし、自分から話すかどうかは本人の自由です。この順序を守るには、募集の段階で味見の有無や扱う食材まで書いておくことが前提。そうすれば応募の時点で本人が判断でき、面接で踏み込んだ質問をする必要そのものがなくなります。

確認のタイミングは、内定後・受け入れ準備の段階へ

食事や礼拝への配慮そのものは、そもそも選考で扱う話題ではありません。内定後、受け入れ準備の一環として本人と相談すればよいことです。この「選考では扱わず、内定後に確認する」という発想は、厚生労働省自身も採っています。外国人の就労資格の確認について、同省は採用選考の段階では口頭または書面で確認し、在留カードによる確認は採用内定後に行うことが必要だと案内しています(カードのどこを見るかは在留カードの確認方法と不法就労助長罪で解説しています)。内定後なら「当社の食堂はこういう献立です」と示したうえで困ることがないかを確認でき、宗教の話が出ても採否には影響しません。すでに採用は決まっているからです。

現場で実際に起きること——「本当に人による」

ネパール人スタッフ全員と、焼肉食べ放題に行った日

冒頭でも触れましたが、当社で働くネパール人スタッフは、たまたま全員が仏教徒です。先日、みんなで焼肉の食べ放題に行きました。「私たちは牛肉も食べられます」と、あっさりしたものでした。統計上、ネパールのヒンドゥー教徒は81.2%。確率的にはかなり高いのに、当社の現場では全員が例外側にいたわけです。もし「ネパール人だから焼肉は避けよう」と気を回していたら、誰も望んでいない配慮のために、一番盛り上がる選択肢を勝手に捨てていたことになります。「あなたはこれを食べられないはずだ」という決めつけは、本人からすれば、確かめもせずに枠にはめられたということ。配慮のつもりが線引きになる。だから、聞くのです。

「面接で牛肉を扱えるか聞いていいですか」——うどんチェーンからの相談

あるうどんチェーンから、こんな相談を受けたことがあります。「ネパールの方はヒンドゥー教で牛肉が食べられないと聞いた。面接で牛肉を食べられるか質問してもいいでしょうか」。真面目に考えた末の、誠実な問いです。

このときお伝えしたのは、まず「食べられるかどうかは人によります」ということでした。そのうえで、求人条件しだいで紹介の仕方が変わります。牛肉に触れて調理できれば足りるのか、それとも味見までしてもらう必要があるのか。飲食業では味の確認が業務に入ることがあり、ここが決まらないと確認すべきことも決まりません。触れれば足りるなら制約はほとんど問題になりませんし、味見が必要なら「牛肉を食べられること」が業務要件になります。

いま同じご相談を受けたら、私たちは質問の立て方そのものを組み替えることをお勧めします。宗教を条件にするのではなく、業務内容として「味の確認を含む」と明示する。「宗教を聞いてヒンドゥー教徒を外す」のではなく、「業務内容を確定して、その業務ができる方に来ていただく」。前者は信条を理由とした選別、後者は適性・能力による選考です。外食業の論点は外食業の外国人採用はこれからどうなるでも扱っています。

宗教の違う4人で、食事の店が決まらない

代表の岡本が以前の職場で経験した話です。同じチームの4人が、仏教・イスラム教・ヒンドゥー教・キリスト教と全員違う宗教でした。食事に行こうとなったものの、店がまったく決まりません。ヒンドゥー教の一人は牛肉を、イスラム教の一人は豚肉と豚由来のものを避ける。肉は選択肢から消えました。この4人は魚なら大丈夫でしたが、一般には来日間もないと生魚が食べられない人もいます。条件を積み上げるほど、選べる店はなくなっていきます。

そのうえ、気まずいことも起きました。決まらないまま空腹が続き、ヒンドゥー教の一人が苛立って「大丈夫だよ、ちょっとお肉を食べたくらいで神様は怒らないよ」と言ってしまったのです。悪気はなく、彼自身が戒律に緩やかなタイプでした。ただ言われた側は「じゃあ私は抜けるから、好きなものを食べに行っていいよ」と返し、その場を収めるのがひと苦労でした。

この一件が示すのは、宗教の濃淡は、同じ宗教の中にも、外国人同士の間にもあるということです。配慮とは、誰かの基準を全員に当てはめることではなく、それぞれが自分で決められる状態をつくることなのです。

社食・寮・歓迎会をどう設計するか——「選べる場」にするという解

職場の歓迎会で、それぞれ違う料理を前に談笑する同僚たち

完璧な配慮を目指す必要はありません。目指すのは「本人が選べる状態」です。

指針が求めているのは「利用機会の保障」

事業主は、外国人労働者について適切な宿泊の施設を確保するように努めるとともに、給食、医療、教養、文化、体育、レクリエーション等の施設の利用について、外国人労働者にも十分な機会が保障されるように努めること。

出典: 厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(平成19年厚生労働省告示第276号、最終改正 令和8年厚生労働省告示第227号)第四の五5。同指針第四の五7は「事業主は、外国人労働者を受け入れるに当たっては、日本人労働者と外国人労働者とが、文化、慣習等の多様性を理解しつつ共に就労できるよう努めること」と定めています。

「給食」が明記されている点に注目してください。求められているのは豪華な対応ではなく、利用の機会が実質的に保障されているかです。社員食堂があっても、その日の献立が本人には食べられないものばかりで、中身も分からない。これでは機会が保障されているとは言いにくい。逆に言えば、選べるようにするだけで、指針の水準はおおむね満たせます。

場面別に、何を設計するか

場面現場で起きること設計の考え方
社員食堂・給食・仕出し弁当本人が中身を選べず、何が入っているかも分からない主な食材を献立に表示する。複数のメニューから選べるようにする
寮・社宅自炊できないと、食べられるものの選択肢が一気に狭まる調理できる環境を用意し、食材を買える店の情報を渡す
歓迎会・懇親会店が決まらない。単一の食材が主役の店だと一部の人が食べられない各自が単品で頼める店にする。「全員が同じものを食べる」前提を外す
業務での食品の取り扱い味見が必要な工程があると、就業自体が成り立たないことがある宗教を条件にせず、募集段階で「業務内容」として明示する
就業時間中の礼拝必要かどうかは人によって違う(ネパール人材で問題になることは基本的にない)会社としての方針を先に示し、内定後に本人と実現可能性を確認する

出典: 厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(平成19年厚生労働省告示第276号)第四の五を踏まえ、G-Star HR Link が受け入れ支援の実務として整理したものです。

歓迎会は「居酒屋で各自が好きなものを頼む」でいい

先ほどの「店が決まらない4人」には、簡単な解があります。居酒屋に行って、各自が好きなものを頼めばいい。これは妥協ではなく、むしろ質の高い配慮です。「全員が食べられる店」を探すやり方は条件が増えるほど破綻しますが、「各自が選べる店」なら、宗教が増えても好き嫌いやアレルギーが混ざっても同じ仕組みで対応でき、配慮のコストが人数に比例して増えません。焼肉のように単一の食材が主役の店のときだけ、事前に一声かける。それで十分です。

本当のリスクは「自分で選べない環境」だけ

ここまでを裏返すと、リスクの所在がはっきりします。注意が必要なのは、本人が自分で選べない環境です。寮の食事、社員食堂、現場に配られる弁当のように、出てきたものを食べるしかない場面。ここだけは事前に確認して落とし所を決めておく価値があります。逆に、自分で店を選び、買い物ができる環境なら、制約は本人が自然に処理します。私たちが近隣のアジア食材店の情報をお渡ししているのも、本人が自分で解決できる状態をつくるためです。地域の資源は土地で違うので、浜松で外国人材を採用するにはもあわせてご覧ください。

最後にもうひとつ。宗教上の理由がなくても、食べられないものは誰にでもあります。「外国人だから特別にたくさん配慮しなければならない」という発想は、実は正確ではありません。指針が求めているのは特別扱いではなく、機会が実質的に保障されていること。方針を先に示し、それでも大丈夫だという方に来ていただく——この順番なら、後からトラブルになることはほとんどありません。受け入れ体制の設計は外国人材が定着する会社の共通点、採用全体の利点と注意点はネパール人採用のメリット・デメリットで扱っています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 面接で「宗教は何ですか」と聞いてはいけないのですか?

聞かないでください。厚生労働省は「宗教に関すること」を、就職差別につながるおそれがある事項のうち「本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)」に分類しています。また職業安定法に基づく告示は、求人者を含む名宛人に対し「思想及び信条」の収集を制限しています。「参考に聞くだけ」も認められません。たずねた時点で採否決定に影響を与えることになる、と厚生労働省は述べています。

Q2. では、食事の制約をどうやって把握すればよいのですか?

2つの経路があります。ひとつは業務に直結する制約で、これは「宗教」ではなく「業務内容」として扱います。募集段階で業務内容(例:味の確認を含む調理業務)を明示し、面接では「この業務を担当できますか」と適性・能力の観点で確認します。もうひとつは食堂や寮など受け入れ環境の配慮で、これは内定後に相談すれば足ります。

Q3. 業務中にお祈りの時間を確保する必要はありますか?

ネパール人材の場合、業務時間を割いてお祈りをする習慣は基本的にありません。お寺には行きますが、休日や朝の習慣で、日本人が神社にお参りする感覚に近いものです。他の宗教では礼拝の時間が必要な方もいますが、その場合も対応の幅は人によって違います。会社としての方針を先に示し、本人と現実的な運用を確認するのが確実です。

Q4. 紹介会社を通す場合、宗教のことは紹介会社に確認してもらえますか?

「宗教を調べて絞り込む」という形にはなりません。紹介会社も同じ告示の名宛人で、思想・信条の収集は制限されているからです。実務では、企業から業務要件(例:味の確認を含む/牛肉に触れる工程がある)をお預かりし、その業務を担当できる方をご紹介します。本人には求人条件として業務内容を伝えるので、応募の時点で本人が判断できます。

まとめ

  • ネパールのヒンドゥー教徒は81.2%(外務省「ネパール基礎データ」、2021年ネパール国勢調査ベース)。よく見る「約7割」は実態とずれている。ただしこの数字から、一人ひとりが何を食べられるかは分からない
  • 「カウ(牛)は食べないがバッファロー(水牛)は食べる」「牛乳・牛脂は使う」「食べないが触れる・調理はできる」。ひとくくりの「牛肉NG」は現場では成り立たない
  • 採用選考の場で宗教を尋ねてはいけない。宗教は厚生労働省が示す「本来自由であるべき事項」であり、職業安定法に基づく告示は求人者に対しても「思想及び信条」の収集を制限している
  • 聞くべきなのは宗教ではなく業務。「この業務を担当できますか」は適性・能力の確認であり、公正な採用選考の枠内。食事や礼拝への配慮は内定後の受け入れ準備として相談する
  • 受け入れ環境は「完璧な配慮」ではなく「本人が選べる状態」を目指す。本当のリスクは、寮の食事や社員食堂のように自分で選べない場面だけ

次に読むべき記事:

「聞いていいのか分からない」まま進めなくて大丈夫です

宗教と食事の話が難しいのは、答えが分からないからではなく、「聞いていいのかどうかが分からない」からだと思います。配慮しようとすれば決めつけになり、確認しようとすれば法令に触れるのではと不安になる。その板挟みで手が止まってしまう企業を、私たちは何度も見てきました。線引きさえ分かってしまえば、あとは思っているよりずっと単純な話です。

私たちG-Star HR Linkは、ネパール現地の自社教育機関で人材を育て、受け入れ準備から入社後の定着までを一貫して支援しています。求人条件の立て方、食堂や寮の設計、面接での確認の仕方——「これは聞いていいのか」という粒度のご相談でも構いません。お問い合わせフォームから、お気軽にお声がけください。