
「日本語ができる人を紹介してください」
——外国人採用では、よくあるご相談です。
ところが2027年4月に始まる育成就労では、日本語を「採用時の条件」だけで考えることが難しくなります。
就労開始前にはA1相当以上の試験合格、またはA1相当講習の受講が必要で、さらに育成就労の3年間でA2相当の日本語能力を目指す仕組みになっているためです。
実務で重要なのが、日本語講習を誰に頼むかです。
入国後講習では、認定日本語教育機関の「就労」課程によるA1相当講習を100時間以上受講することが基本とされ、3年間の育成期間中にはA2相当の講習も100時間以上受講することが求められます。
費用負担を含め、必要な措置を講じるのは育成就労実施者または監理支援機関です。
では、実際にどこへ依頼すればよいのでしょうか。
出入国在留管理庁は、育成就労向け日本語講習の提供状況を一覧表として公開しています。
この記事では、就労開始前・1年経過時・育成終了時の3段階を整理しながら、入口の選択肢と講習先の探し方を具体的に見ていきます。
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ネパール現地に自社の日本語学校とトレーニングセンターを持ち、面接時点でJFT-Basic A2(JLPT N4相当)を取得した候補者を紹介しています。
来日前の日本語教育を自社で担っているからこそ、育成就労で企業に求められる日本語教育を、自社の実務課題として検討しています。
育成就労の日本語要件は3段階|就労開始前・1年経過時・育成終了時に何が求められるか

まず「日本語教育の参照枠」のA1・A2を知る
育成就労の日本語能力を考えるうえで、基準となるのが文化庁の「日本語教育の参照枠」です。
文化審議会国語分科会が2021年(令和3年)10月12日に取りまとめたもので、日本語能力の熟達度をA1からC2までの6段階で示しています。
育成就労で主に登場するのは、最も基礎的なA1と、その一つ上のA2です。
A1:
具体的な欲求を満足させるための、よく使われる日常的表現と基本的な言い回しは理解し、用いることもできる。
もし、相手がゆっくり、はっきりと話して、助け船を出してくれるなら簡単なやり取りをすることができる。
A2:
ごく基本的な個人情報や家族情報、買い物、近所、仕事など、直接的関係がある領域に関する、よく使われる文や表現が理解できる。
簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄についての情報交換に応じることができる。
育成就労では、就労開始前までにA1相当以上、開始から1年以内にA1相当、育成就労終了までにA2相当以上の日本語能力が求められる仕組みです。
出典: 文化庁「『日本語教育の参照枠』報告について」(令和3年10月12日)、出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」ほか。
「A2.2相当以上」と「A2相当以上(N4等)」は同じものを指している
資料を読み比べると、ここで一度つまずきます。
入管庁の「育成就労制度の概要(令和8年7月改訂)」は、育成就労終了時の日本語能力を「日本語能力A2.2相当以上の試験(JFT-Basic、JLPTのN4等)」としています。
一方、Q&AのQ75では、特定技能1号への移行要件を「日本語能力A2相当以上の試験(日本語能力試験N4等)」と表記しています。
数字が違いますが、ここは別の水準を示しているわけではありません。
「A2.2」:日本語教育の参照枠A2相当のレベル
「A2.1」:日本語教育の参照枠A1に到達し、かつA2.2到達に向けて学習が進展しているレベル
つまり、育成就労制度でいうA2.2は、制度上の「A2相当」を具体化した表記です。
育成終了時には、原則としてこの水準の試験合格が求められ、代表例としてJFT-BasicやJLPT N4等が挙げられています。
なお、分野によってはA2相当より高い日本語能力が求められる場合があります。
出典: 出入国在留管理庁「育成就労制度の概要(令和8年7月改訂)」(2026年7月27日公表)、「育成就労制度Q&A」
育成就労の日本語要件を3段階で整理|いつ「受験」し、いつ「合格」が必要か
3年間の日本語要件は、「受験すればよい段階」と「合格が必要な段階」を分けて見ると分かりやすくなります。
段階 | 時期 | 求められる水準 | 対応する試験の例 | 必要なこと |
|---|---|---|---|---|
① 入口 | 就労開始前まで | A1相当以上 | JFT-Basic、JLPTのN5等 | 試験に合格、またはA1相当講習を100時間以上受講※ |
② 中間評価 | 開始から1年以内 | A1相当(分野により上乗せ) | 分野別運用方針で定める試験 | 試験を受けることが必要。合格が制度上の共通要件とは限らない |
③ 出口 | 3年間の終了まで | A2.2相当以上(=参照枠のA2相当) | JFT-Basic、JLPTのN4等 | 試験に合格することが育成就労の目標 |
(参考)転籍 | 本人意向の転籍時 | A2.1相当以上(分野ごとに設定) | 分野別に定める試験 | 試験に合格することが条件 |
出典: 出入国在留管理庁「育成就労制度の概要(令和8年7月改訂)」および育成就労制度Q&A(Q63・Q75)、「育成就労制度運用要領」をもとに作成
※①の開始時・②の1年目は、分野によってより高い日本語能力が求められる場合があります。
また、①の講習はA1相当試験に合格していれば不要です。
ここで最も重要なのが②です。
入管庁Q&A Q63は、1年以内について「A1相当の日本語能力を修得し、試験を受ける」としています。
一方、3年目はA2相当の日本語能力を修得し、試験に合格することが育成就労の目標です。
つまり、「1年目は受験、3年目は合格」と覚えると整理しやすくなります。
移行要件と3年間のスケジュールの引き方は育成就労から特定技能へ|移行要件はA2.2相当、3年で育てる採用設計、制度の全体像は育成就労制度とは|2027年4月開始の新制度を採用企業向けに整理をご覧ください。
就労開始前の入口は2択|A1相当試験に合格するか、A1相当講習を100時間以上受けるか

試験に合格しなくても、入国はできる
「A1相当の試験に合格しないと、日本に入国できない」と考えてしまうのは誤りです。
出入国在留管理庁のQ&A Q67は、A1相当試験に合格していなくても入国できることを明記しています。
育成就労では、入国時点で日本語能力の要件はありません。
ただし、就労を開始する前までに、次のいずれかを満たす必要があります。
A1相当以上の日本語能力試験に合格する
A1相当の講習を100時間以上受講する
つまり、試験に合格していればA1相当講習は不要で、合格していなければ入国後講習などで講習を受ける仕組みです。
「入国できるか」と「就労を開始できるか」は分けて考える必要があります。
A1試験に合格しているかで入国後講習は100時間変わる
「入国後に講習を受ければいい」と考える場合でも、A1相当試験に合格しているかどうかで、入国後講習の総時間数が変わります。
育成就労制度運用要領(令和8年8月改正版)では、次のように定められています。
認定申請時点の状態 | 入国後講習の総時間数 | 入国前講習を受けている場合 | 日本語科目 |
|---|---|---|---|
A1相当試験の合格を証明できない | 320時間以上 | 過去6か月以内に160時間以上受講済みなら160時間以上 | A1相当講習100時間以上が必須 |
A1相当試験の合格を証明できる | 220時間以上 | 過去6か月以内に110時間以上受講済みなら110時間以上 | 個別に必要な時間数 |
出典: 出入国在留管理庁「育成就労制度運用要領」(令和8年8月)第4章より作成。
つまり、認定申請時点でA1相当試験の合格を証明できるかどうかで、入国後講習の基準は100時間分違います。
1日8時間・週5日を前提にすれば、100時間は約2週間半に相当します。
入国後講習は原則として業務開始前に行われるため、採用から就労開始までのスケジュールにも影響します。
なお、認定後から入国までの間にA1相当試験に合格すれば、A1相当講習は不要となり、軽微変更届出が必要です。
一方、入国後講習の途中で合格しても、総時間を220時間に短縮することはできません。
A1相当講習を実施できるのは誰か
では、就労開始前に必要となるA1相当講習の100時間を、誰に頼めばよいのでしょうか。
原則は、文部科学大臣の認定を受けた認定日本語教育機関の「就労のための課程」です。
認定日本語教育機関には「留学のための課程」「就労のための課程」「生活のための課程」があり、認定を受けていても「就労のための課程」を設置していない機関があります。
そのうえで、当分の間の経過措置として、登録日本語教員による講習も認められています。
運用要領が示す主な要件は次の4つです。
講習の目標がA1相当であること(分野別運用方針でA1相当を超える水準を定める場合は、その水準)
講習の時間が100時間以上であること
登録日本語教員1人に対して、同時に受講する生徒が20人以下であること
対面以外で実施する場合は、インターネット環境を整え、オンラインで同時かつ双方向に行われること
この経過措置について、入管庁は「育成就労法施行後5年間を目途とする当面の間」と説明しています。
2027年4月1日の施行から単純に2032年までと決まっているわけではありません。
さらに、A1相当講習は入国前講習で実施することも可能です。
現地で必要な講習を済ませておけば、来日後の講習手配や就労開始までのスケジュールを組みやすくなります。
運用要領では、登録日本語教員による講習について、日本語講習モデルカリキュラムを参照して実施することも示されています。
出典:出入国在留管理庁「育成就労制度運用要領(令和8年8月)」、同庁「日本語教育機関の講習提供状況一覧表(令和8年6月時点)」。
講習は2本立て|A2目標講習100時間が3年間のうちに別途必要
育成就労の日本語講習は、就労開始前のA1相当講習だけでは終わりません。
3年間の育成就労期間中には、育成就労の目標であるA2相当の日本語能力を身につけるため、A2目標講習を100時間以上受講する機会を提供することが求められます。
費用負担を含め、必要な措置を講じるのは育成就労実施者等です。
A1・A2の両方の講習が必要な場合、3年間で計200時間以上の講習を組むことになります。
ただし、A2相当試験に事前に合格している場合や、入国前・入国後講習ですでに所定のA2目標講習を終えている場合は、改めて受講機会を提供する必要はありません。
また、A2目標講習の受講時間を労働時間として扱うことは義務ではありません。
ただし、受講機会そのものを意図的に与えなければよいわけではありません。
運用要領は、必要な措置を講じず、試験の受験機会だけを与える場合などについて、育成就労計画の認定取消しの対象となるおそれがあるとしています。
費用負担を含む措置義務は「育成就労実施者又は監理支援機関」にある
日本語講習については、費用負担を含め、受講させるために必要な措置を講じることが求められています。
出入国在留管理庁のQ&A Q66は、育成就労実施者又は監理支援機関が、費用の負担を含めて日本語能力向上のために必要な措置を取るとしています。
一方、A2目標講習について運用要領は、育成就労実施者が講じる措置の例として「講習に係る事務手続や講習費用等の負担」を挙げ、講習主体の選定や契約、費用負担などを具体的に示しています。
そのため、実務ではまず育成就労実施者側の費用として見込んだうえで、監理支援機関との契約や役割分担を確認するのが安全です。
なお、現時点で講習費用の公的な相場調査・公表データは確認できないため、具体的な金額は記載せず、各講習機関へ直接確認するのが確実です。
来日前の日本語教育の実際は海外の日本語学校の実態|全寮制「軍隊形式」と通学制で人材はどう変わるか、技能実習からの変更点の総論は育成就労と技能実習の違い|転籍・日本語要件・キャリアパスの変更点をご覧ください。
A1相当講習を頼める先は、まだ限られている|入管庁の一覧表で地域を確認
一覧表が3本に分かれている理由
出入国在留管理庁は「日本語教育機関の講習提供状況一覧表(令和8年6月時点)」を公表しました。
育成就労の日本語講習を提供できるかを調査した結果で、一覧は3本に分かれています。
現在公表されている最新の一覧表です。
認定日本語教育機関(「就労のための課程」)——原則となる講習の提供先。この課程を設置する機関が掲載されています
認定日本語教育機関(全体)——認定機関全体の一覧。「就労のための課程」がない場合は、経過措置による登録日本語教員の講習として提供できます
告示日本語教育機関——法務大臣の告示を受けた機関。経過措置により、在籍する登録日本語教員が一定の要件を満たして講習を提供できます
「認定」と「告示」は根拠となる制度が異なります。
依頼先を探す際は、まず自社の地域を一覧表で確認し、どのルートで講習を提供する機関なのかまで確認すると整理しやすくなります。
日本語講習の提供状況を3つの一覧表から集計
出入国在留管理庁が公表した3つの一覧表を開き、掲載行を集計しました。
都道府県名のふりがななどの表記ゆれを正規化し、重複掲載にも注意して整理しています。
一覧表の種類 | 掲載機関数 | うち「提供可能」 | A1相当講習を掲載 | 掲載のある都道府県数 |
|---|---|---|---|---|
認定日本語教育機関(「就労のための課程」) | 3 | 1 | 3 | 1(東京都のみ) |
認定日本語教育機関(全体) | 45 | 15 | 38 | 19 |
告示日本語教育機関 | 274 | 46 | 175 | 38 |
合計 | 322 | 62 | 216 | 39 |
出典: 出入国在留管理庁「日本語教育機関の講習提供状況一覧表(令和8年6月時点)」の3ファイルを筆者が集計。
掲載行数は延べ数であり、重複を含みます。筆者集計では、名寄せの方法により実機関数は317~318機関となります。
注目したいのは、「就労のための課程」の一覧に掲載された機関が3校にとどまる点です。
これは調査結果に掲載された数であり、全国の提供可能機関の総数を示すものではありません。
ただし、地方企業が講習先を探す際には、地域や提供条件によって選択肢が限られる可能性があります。
経過措置の活用も視野に入れ、所在地だけでなく、A1相当講習の提供可否や実施条件を個別に確認することが重要です。
「提供可能」は延べ322件中62件——半数以上は検討段階
数え方で注意したいのが、「日本語講習 提供可否」の欄です。
回答には「提供可能」だけでなく、「提供する方向で検討」「提供不可の方向で検討」「提供不可」などがあり、検討段階を提供可能に含めてはいけません。
3ファイルを合わせた筆者集計では、延べ322件のうち「提供可能」は62件(約19%)にとどまり、最も多いのは「提供する方向で検討」の179件(約56%)です。
ほかに「提供不可の方向で検討」36件、「提供不可」26件、無回答18件、「2027年度から提供可能」1件となっています。A1相当講習を掲載し、かつ「提供可能」と回答した機関は55件です。
つまり、一覧に掲載されていても、問い合わせれば必ず講習を依頼できるとは限りません。
備考欄には「依頼内容によっては提供をお断りする場合がございます」「オープンコースの開講時期・日程等は未定です」といった記載もあります。
モデルカリキュラムの公表予定だけを理由に、各機関の準備状況を一律に判断することはできません。
こうした状況では、1校に絞ってから依頼するのではなく、複数の候補に並行して問い合わせ、受入れ人数や実施時期、費用などを確認しておくことが重要です。
講習先の確保が遅れると、入国時期や受入れ準備のスケジュールにも影響する可能性があります。
地域の偏りは明確——オンライン対応も選択肢に
都道府県別に見ると、掲載状況には地域差があります。
筆者集計では、掲載がない県は8県(青森・秋田・山形・福井・滋賀・島根・愛媛・高知)で、「提供可能」と回答した機関が掲載されているのは19都道府県でした。
掲載数の上位は東京都70件、大阪府35件、福岡県25件、愛知県21件、兵庫県20件。
静岡県は11件で、うち「提供可能」は5件という結果でした。
ただし、これは2026年6月時点の一覧表に基づく延べ掲載数であり、地域内の需要に対して十分かどうかを直接示す数字ではありません。
対面での受講が難しい場合は、オンライン対応も確認したいところです。
筆者集計では、A1相当講習をオンラインで提供できるとする掲載は181件、「提供可能」と回答した62件のうち50件がオンラインに対応していました。
実際の受講先は、実施時期や受入れ人数も含めて個別に確認しましょう。
一覧表のどの列を見るか
一覧表は、所在地だけでなく、提供可否や講習内容、受入れ条件まで確認して使います。
地域の候補を探すときは、次の順で見ると効率的です。
所在地(都道府県・市区町村)——通学や送迎が可能な範囲にある機関を探します。
オンライン対応の有無も考慮しましょう。日本語講習 提供可否——「提供可能」と「提供する方向で検討」は区別します。
検討中の機関は、依頼できるかを個別に確認します。日本語講習提供内容——A1相当講習・A2目標講習の別と、対面・オンラインの対応状況を確認します。
両方を同じ機関に依頼したい場合は、双方の提供可否を見ましょう。講習受入れ可能人数——予定人数を受け入れられるか確認します。
記載人数が実際の受入れ枠を保証するとは限らないため、実施時期も含めて問い合わせます。所属する登録日本語教員の紹介可否——「紹介可能」の場合は、教員の紹介を受け、自社会場で実施する方法も候補になります。
実施条件や必要な体制は別途確認が必要です。育成就労実施者(受入れ企業)へのお知らせ——送迎・宿舎の手配や、対面授業の実施時期に関する条件などが記載されている場合があります。
問い合わせ前に読み、見積もりや日程の確認に役立てましょう。
入管庁が講習先を斡旋しているわけではない
この一覧表は、日本語教育機関への調査結果をもとに、受入れ企業や監理支援機関が講習先を探す際の参考情報として公表されたものです。
入管庁が講習先を斡旋したり、掲載機関の講習内容や質を保証したりするものではありません。
掲載されていても、希望する時期や人数で依頼できるとは限らないため、提供可否や実施条件は各機関に直接確認する必要があります。
また、一覧表は令和8年6月時点の状況を示したもので、現在の提供状況と異なる可能性があります。
今後、提供体制が変わったり、認定日本語教育機関が増えたりすることも考えられます。
この記事で個別の学校名を挙げていないのも、特定の機関を固定的に推奨することを避けるためです。
実際に依頼先を選ぶ際は、入管庁の公式ページで最新の一覧表を確認したうえで、各機関に問い合わせ、条件を比較して判断してください。
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分野によって求められる日本語水準は違う
1年経過時の要件と、本人意向による転籍時の基準
育成就労では、1年経過時と本人意向による転籍時、育成終了時で、日本語能力の目標が異なります。
原則は1年経過時にA1相当以上、本人意向による転籍時にA2.1相当以上、育成終了時にA2.2相当以上です。
ただし、分野の特性に応じて、より高い水準が設定される場合があります(Q56・Q63)。
分野・業務区分 | 1年経過時 | 本人意向の転籍時 | 育成終了時 |
|---|---|---|---|
大半の分野(原則) | A1相当以上 | A2.1相当以上 | A2.2相当以上 |
介護 | A2.2相当以上および日本語学習プラン(B1相当以上の場合は不要) | A2.2相当以上 | A2.2相当以上および介護特定技能評価試験(日本語) |
鉄道のうち運輸係員 | A2.2相当以上 | A2.2相当以上 | B1相当以上 |
自動車運送業・航空 | 設定なし | 設定なし | 設定なし(育成就労産業分野ではないため、育成就労のルートそのものがありません) |
出典: 出入国在留管理庁「育成就労制度の概要(令和8年7月改訂)」「特定技能制度・育成就労制度の人材基準及び業務区分」より、日本語能力水準の欄を抜粋して作成
注意したいのは、1年経過時の原則をA2.1相当以上と誤認しないことです。
A2.1相当以上が原則として求められるのは、本人意向による転籍時です。
1年目の教育計画を立てる際は、この違いを押さえておきましょう。
また、自動車運送業と航空は、特定技能の対象分野ですが、育成就労産業分野には設定されていません。
そのため、表の「対象外」は日本語水準が設定されていないという意味だけでなく、育成就労の対象外であることを示しています。
試験への合格が「本人意向の転籍」の条件になる
本人の意向による転籍では、一定の就労期間を満たすだけでなく、技能と日本語の試験に合格することも要件になります。
制度概要には、所定の技能試験と日本語試験について「これらの試験への合格が本人意向の転籍の条件」と明記されています。
日本語教育への投資は、本人の成長だけでなく、将来の転籍要件にも関わります。
教育を抑えれば転籍を難しくできる、という発想では、特定技能1号水準の人材育成という制度の目的を損ないます。
育成就労実施者には、3年間の育成期間中にA2相当の日本語講習を受講する機会を提供することも求められます。
ただし、既に所定の日本語試験に合格している場合は、改めて受講させる必要はありません。
大切なのは、教育を制限することではなく、必要な学習機会を確保しながら、本人が働き続けたいと思える職場をつくることです。
転籍ルールの詳細は育成就労の転籍ルールと人材流出リスク|分野別1年・2年の線引きから考えるで扱っています。
分野別運用要領は、17分野中9分野が公表済み
自分の分野の具体的な要件は、分野別運用方針と分野別運用要領で確認します。
入管庁が公表していた育成就労の分野別運用要領は、工業製品製造業(6月4日)、鉄道(6月30日)、外食業(7月10日)、ビルクリーニング・リネンサプライ(7月14日)、自動車整備・木材産業(7月21日)、物流倉庫(8月28日)、林業(8月31日)、飲食(8月31日)料品製造業分野(10月9日)、資源循環分野(10月9日)です。
育成就労産業分野は全17分野のため、公表済みは半数を超える段階です。
未公表の分野については、まず概要資料や分野別運用方針を確認し、運用要領が公表されたら、申請書類や審査基準を含めて改めて照合する必要があります。
分野別の告示や運用要領の探し方は育成就労の分野別上乗せ基準|自分の分野の告示と運用要領を確認する手順にまとめました。
よくある質問(FAQ)
Q1. 日本語ができる人だけを採用すれば、講習は不要になりますか
A.A1相当以上の試験合格を育成就労計画の認定申請時に証明できれば、A1相当講習は不要となり、入国後講習の総時間数は原則320時間以上から220時間以上に短縮されます。
ただし、A1相当の合格だけでは、3年間にA2相当講習を受講する機会を提供する義務はなくなりません。
A2相当の試験に事前合格している場合は、A2目標講習も改めて受講させる必要はありません。
Q2. 講習はオンラインでも認められますか
A.認められます。
ただし、出入国在留管理庁のQ&A(Q65)では、オンライン受講について、双方向で同時にコミュニケーションを取れることなど、一定の要件を満たす必要があるとされています。
録画教材を視聴するだけでは要件を満たしません。
また、認定日本語教育機関の「就労のための課程」を、認定基準第23条に基づく「特別の日本語教育課程」として実施する場合は、講習の全てを対面以外の方法で受講できる特例があります。
対面で通える機関が近くにない場合は、オンライン対応の可否と実施条件を確認しましょう。
Q3. 自社の社員が日本語を教えるのではだめですか
A.A1相当講習・A2目標講習として認められるには、原則として認定日本語教育機関の「就労のための課程」で受講する必要があります。
当面の経過措置では、一定の要件を満たす登録日本語教員による講習も認められます。
社内に該当する教員がいなければ、外部への依頼が基本です。
一方、現場用語や安全に関する言い回しを自社で教えることは禁止されていません。
こうした社内教育は、制度上のA1相当講習・A2目標講習とは別に実施できます。
Q4. 技能実習の入国後講習とは何が違いますか
A.大きな違いは、講習時間の定め方と日本語教育の基準です。
技能実習では、技能実習法施行規則第10条第2項第7号により、入国後講習の総時間数を第1号技能実習の予定時間全体の6分の1以上(一定の入国前講習を受けた場合は12分の1以上)と定めています。
省令上、日本語科目の時間数は固定されていませんが、運用要領では240時間を標準としています。
育成就労では、入国後講習全体を原則320時間以上(一定の入国前講習を受けた場合は160時間以上)とし、A1相当試験に合格していない場合は、A1相当講習を100時間以上受講する仕組みです。
講習は認定日本語教育機関の「就労」課程が原則で、登録日本語教員による講習も一定の要件で認められます。
育成就労計画には日本語能力の目標や講習予定を記載します。
計画認定申請の書類まわりは育成就労計画の認定申請|2026年9月1日開始・施行日前申請で揃える書類をご覧ください。
まとめ
日本語要件は段階的に設定されている
就労開始前のA1相当要件に加え、開始から1年以内の試験、育成就労終了までのA2相当の目標があります。
分野によって上乗せがあり、転籍時には別の水準が条件となる場合もあります。入口は試験合格か講習受講
就労開始前にA1相当試験に合格していない場合は、A1相当講習100時間以上の受講が必要です。
認定申請時点での合格状況により、入国後講習の総時間数も変わります。A1・A2の講習は別々に考える
A1相当講習に加え、原則として3年間のうちにA2目標講習100時間以上を受講する機会の提供が必要です。
費用負担を含む措置は受入れ側の義務であり、未履行には制度上の不利益が生じる可能性があります。講習先の一覧は、候補探しの参考情報
令和8年6月時点の一覧を独自集計した結果では、掲載322件中「提供可能」は62件、「就労のための課程」を持つ認定日本語教育機関は3校でした。
「提供する方向で検討」は「提供可能」と区別し、件数は集計時点を明記します。日本語の目標は分野によって異なる
1年目・終了時の水準や転籍時の条件は、分野別運用方針で確認が必要です。
分野別運用要領の公表数も更新されるため、記事公開時点で最新の公表状況を再確認してください。
次に読むべき記事:
「日本語をどこで習わせるか」は、いま調べておく価値がある
「うちの県には頼める先がなさそうだ」と感じた方もいるかもしれません。
令和8年6月時点の一覧表では、地域によって提供可能と回答した機関の数に差があります。
ただし、これは調査時点の状況です。
2027年4月の制度開始に向け、各機関の対応方針が変わる可能性もあるため、現時点の情報だけで選択肢がないと判断する必要はありません。
まずは、自社の地域にどのような講習先があり、何が不足しているのかを把握しておくことが大切です。
私たちがお手伝いできるのは、来日前の日本語学習をどう進めるかという部分です。
来日前にA1相当やA2相当の試験に合格していれば、入国後に必要な講習の一部が免除される場合があります。
必要な水準は分野や状況によって異なるため、自社に必要な要件と採用スケジュールを早めに整理しておくと、受入れ準備を進めやすくなります。
「何から確認すればよいか分からない」という段階でも構いません。
制度や準備の進め方を整理するところから、お気軽にご相談ください。
本記事の制度に関する記述は、公表されている情報をもとに整理しています。
制度は今後も見直される可能性があるため、最新の省令・運用要領については、出入国在留管理庁などの公式情報をご確認ください。