
朝、寮を確認すると部屋が空いている。電話はつながらず、私物だけが残っている。
――技能実習生の失踪は、突然起こります。
受入れ企業がまず気になるのは、本人の安否と警察への届出、そして会社への影響ではないでしょうか。
技能実習生が失踪すると、技能実習を続けることが困難になったとして、技能実習実施困難時届出書の提出が必要です。
企業単独型は実習実施者が、団体監理型は実習実施者から通知を受けた監理団体が、外国人技能実習機構へ提出します。
機構は「遅滞なく」の届出を求めており、入管庁の資料では事由発生から2週間以内と案内されています。
さらに、警察への行方不明者届、離職した場合のハローワークへの届出など、対応先ごとに手続きが異なります。
本記事では、失踪した当日から何を確認し、誰が、どこへ、いつまでに何を出すのかを時系列で整理します。
あわせて、技能実習計画の認定や優良要件など、失踪が受入れに与える影響も公的資料をもとに解説します。
この記事を執筆するG-Star HR Linkは、ネパールの自社日本語学校・トレーニングセンターでの教育から、日本での人材紹介、定着支援まで一貫して携わっています。
浜松ではAsian Mart & Cafeも運営し、来日後の生活や交流にも日常的に接しています。
だからこそ、失踪を本人や会社の一方だけの問題と捉えず、現場で起きている背景まで含めて考えてきました。

技能実習生が失踪したときにやること
所在確認を進めながら、必要な届出も止めない
技能実習生と連絡が取れなくなったとき、まず行うのは所在の把握です。
入管庁のリーフレットでは、同僚の技能実習生から情報を集め、本人のSNSの発信状況を確認し、送出機関等と連携して本国の緊急連絡先にも確認するよう示しています。
本人と連絡できる可能性がある場合は、送出機関を通じて、①監理団体等の保護下に戻ること、②保護を望まない場合は外国人技能実習機構(OTIT)に連絡することを本人に伝えるよう依頼します。
ただし、「戻ってくるかもしれないから届出を待つ」という対応はできません。
技能実習を行わせることが困難となった場合は、技能実習実施困難時届出書の提出が必要で、所在が判明して説得中でも提出が必要とされています。
また、入国前から本国の家族などの緊急連絡先を把握しておくことも、失踪時の対応に役立ちます。
時系列チェックリスト
法令・運用要領・リーフレットの記載を、受入れ企業の動く順に並べ直したものです。
日数は実務上の目安で、法令等で具体的な日数が示されているものとして、ハローワークへの届出があります。
時期 | 誰が | 何をするか |
|---|---|---|
当日 | 受入れ企業 | 寮・職場・私物の状況を記録。同僚から最後に会った日時・様子を聞き取る。連絡手段をすべて試し履歴を残す |
当日 | 受入れ企業 → 監理団体 | 団体監理型の場合、監理団体に通知する(技能実習法第19条第2項は「遅滞なく」を求めています) |
当日〜2日目 | 監理団体・送出機関 | 本国の緊急連絡先に確認。本人に、保護下に戻るか機構へ連絡するよう説得を依頼 |
2〜3日目 | 受入れ企業 | 警察署へ行方不明者届を出す(雇主は届出できる立場として規則に明記) |
おおむね2週間以内 | 企業単独型は受入れ企業/団体監理型は監理団体 | 機構の地方事務所・支所の認定課へ技能実習実施困難時届出書を提出。添付書類も同時に用意 |
離職の扱いが決まった後 | 受入れ企業 | ハローワークへ外国人雇用状況の届出(被保険者かどうかで期限が変わる) |
その後 | 受入れ企業・監理団体 | 賃金・労働時間・指導の記録を直近3か月分そろえる(届出の添付書類)。失踪理由の把握と再発防止策の検討。所在が判明したら本人の希望に応じて帰国・復帰・転籍を支援 |
出典: 出入国在留管理庁「外国人技能実習生の失踪を発生させないために」、同庁・厚生労働省「技能実習制度運用要領」第4章・第5章、技能実習法、行方不明者発見活動に関する規則をもとに作成
「2週間以内」という数字はどこから来ているのか
技能実習法第19条第1項は、企業単独型実習実施者について、技能実習を行わせることが困難となったときは「遅滞なく」届け出るよう定めています。
団体監理型では、実習実施者が監理団体へ速やかに通知し、監理団体が遅滞なく届け出ます。
では、「2週間以内」はどこから来るのでしょうか。
入管庁の失踪防止に関する資料では、技能実習の実施が困難となった事由が発生してから「2週間以内」に、機構へ技能実習実施困難時届出書を提出するよう案内しています。
つまり、法令上の基本は「遅滞なく」、行政資料では「2週間以内」と案内されているという関係です。
2週間を待ってから動くのではなく、所在把握と並行して届出の準備を進め、速やかに提出する、と理解するのが安全です。
所在がわかっても、届出は必要
失踪後に本人の所在が判明し、戻るよう説得している場合でも、技能実習実施困難時届出書は提出する必要があります。
入管庁の運用要領にも明記されています。
「連絡がついたから届出は不要」とはできません。
一方、本人が復帰して技能実習の再開を希望する場合は、別途、外国人技能実習機構の地方事務所へ相談できます。
届出と復帰の相談は、別の手続として考えるのがポイントです。
どこに何を出すか(外国人技能実習機構=技能実習実施困難時届出/入管/ハローワーク/警察への行方不明者届の扱い)

届出先は最大4か所ですが、全部が会社の義務ではなく、根拠も期限もばらばらです。
提出先 | 書類 | 誰が出すか | 根拠 | 期限 |
|---|---|---|---|---|
外国人技能実習機構(地方事務所・支所の認定課) | 技能実習実施困難時届出書(省令様式第9号) | 企業単独型実習実施者 | 技能実習法第19条第1項、同施行規則第21条第1項 | 遅滞なく(入管庁の目安は事由発生から2週間以内) |
外国人技能実習機構(同上) | 技能実習実施困難時届出書(省令様式第18号) | 監理団体(実習実施者は監理団体へ遅滞なく通知) | 技能実習法第19条第2項・第33条第1項、同施行規則第48条 | 同上 |
警察署 | 行方不明者届出書 | 雇主も届出できる | 行方不明者発見活動に関する規則第6条第1項第5号 | 定めなし(入管庁は機構への届出と併せて提出を求めている) |
ハローワーク(事業所所在地の管轄) | 雇用保険被保険者資格喪失届と併せて/外国人雇用状況届出書(様式第3号) | 事業主 | 労働施策総合推進法第28条第1項、同施行規則第10条・第12条 | 被保険者は離職日の翌日から起算して10日以内/被保険者でなければ翌月末日まで |
出典: 技能実習法・同施行規則、入管法、労働施策総合推進法・同施行規則、行方不明者発見活動に関する規則(e-Gov法令検索で条文を確認)、出入国在留管理庁「外国人技能実習生の失踪を発生させないために」
様式も、出す人も、受入れの形で変わる
企業単独型では、実習実施者が省令様式第9号を機構の地方事務所・支所の認定課へ遅滞なく提出します。
団体監理型では、実習実施者が監理団体へ速やかに通知し、監理団体が省令様式第18号を提出します。
受入れ企業がまず行うのは、監理団体への連絡と必要な情報の提供です。
連絡を後回しにすると、監理団体(監理支援機関)側の期限も一緒に遅れます。
届出書に何を書くのか、何を添えるのか
様式第9号は、施行規則第21条第2項が定める6項目に対応しています。
「技能実習を行わせることが困難となった事由」には「行方不明( 年 月 日発生)」の選択肢があり、発生日と事由の概要を記載します。
さらに「技能実習生の現状」では入国状況、住宅の確保、生活費等の状況を、「技能実習の継続のための措置」では本人の継続意思や転籍等に向けた連絡調整の状況を記載します。
行方不明の場合、記載が難しい項目もありますが、状況を確認したうえで記載することになります。
また、運用要領は、継続を希望する技能実習生について、実習実施者や監理団体が他の実習実施者等との連絡調整を行うこと、さらに次の実習先の確保に責任を持つことを示しています(法第51条)。
行方不明の場合は、様式第9号だけで終わりません。次の2点を併せて提出します。
行方不明が判明した際の状況説明書(参考様式第1-46号)
直近3か月分の実習内容及び報酬支払い状況が確認できる資料の写し
参考様式第1-46号では、作業内容・実習時間や賃金の支払状況、行方不明となった原因などを確認します。
賃金台帳、技能実習日誌、出勤簿・タイムカード、賃金の振込記録などが例示されており、実習の実施状況や報酬支払いの事実を確認できる資料を整えておくことが重要です。
警察への行方不明者届は、会社側から出せる
「家族でないと出せないのでは」と止まる担当者もいますが、行方不明者発見活動に関する規則第6条第1項第5号は、「同居者、雇主その他の当該行方不明者と社会生活において密接な関係を有する者」からの届出を認めています。
会社側の担当者が雇主として届け出ることができます。
提出先は原則、行方不明となった時点の住所または居所を管轄する警察署長です。
遠隔地などの事情で難しい場合は、行方不明となった場所や届出人の住所・居所を管轄する警察署長も受理できます(同条第2項)。
届出は「行方不明者届出書」で行い、受理時には氏名・住所・身体の特徴、行方不明となった日時・場所・状況、原因・動機、届出人の連絡先などを確認され、写真その他必要な資料の提出を求められます(第7条)。
在留カードの確認と記録を日頃から運用に組み込んでおくと、行方不明時に必要な情報を整理しやすくなります。
外国人材の在留カード確認については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
ハローワークへの届出は、期限が2種類ある
外国人が離職した場合、ハローワークへの届出には2つの期限があります。
労働施策総合推進法第28条第1項が事業主に届出を義務づけ、施行規則第12条が期限を定めています。
雇用保険の被保険者なら、離職日の翌日から10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」と併せて届け出ます。被保険者でなければ、離職日の属する月の翌月末までに「外国人雇用状況届出書(様式第3号)」を提出します。
行方不明の場合に難しいのが、「離職日」をいつとするかです。
本人から退職の申出がなくても、無断欠勤が続いたからといって直ちに離職日が決まるわけではありません。
就業規則や雇用契約、実際の雇用関係を確認し、離職日を先送りにしないことが実務上のポイントです。
退職・帰国が確定した場合の事務全般は外国人材が退職・帰国するときの手続きで整理しています。
入管への届出は、原則として会社の義務ではありません
技能実習生が会社から離脱したことを入管へ届け出る義務は、第一義的には本人にあります。
入管法第19条の16第1号は、技能実習を含む在留資格をもつ中長期在留者について「当該機関からの離脱若しくは移籍」が生じた日から14日以内の届出を義務づけています。
失踪した本人がこれを出すことはまずありません。
会社側については入管法第19条の17が「所属機関による届出」を定めていますが、これは努力義務で、条文上、労働施策総合推進法第28条第1項の届出をしなければならない事業主は除かれています。
ハローワークへの外国人雇用状況届出が義務付けられている事業主は、入管法19条の17の所属機関による届出の対象から除かれています。
なお特定技能では仕組みが異なり、受入れ継続が困難となったときの随時届出は「事由が生じた日から14日以内」とされています(入管庁の案内)。
また2027年(令和9年)4月1日からは育成就労制度の運用が始まり、施行日時点で技能実習中の1号技能実習生は2号へ移行できるなどの経過措置が示されています。
失踪が、その後の受入れに与える影響
失踪が1人出たからといって、直ちに受入れができなくなるわけではありません。
重要なのは、失踪に「責めに帰すべき事由」が認められるかどうかです。
技能実習計画の認定基準には「過去1年以内」の条件がある
技能実習法施行規則第12条第1項第12号の2は、過去1年以内に、申請者等の「責めに帰すべき事由」により技能実習生の行方不明者を発生させていないことを、技能実習を行わせる体制に係る基準としています。
企業単独型では申請者、団体監理型では申請者と監理団体が対象です。
つまり、単に失踪者が出たことだけで基準に該当するのではなく、申請者等に帰責性がある行方不明が問題となります。
「責めに帰すべき事由」は、過去の違反行為から判断
「責めに帰すべき事由」は、単に失踪したという結果だけで判断されるものではありません。
OTITの運用要領は、行方不明者の発生前1年以内に、技能実習計画や監理団体の許可の取消事由に該当し得る法令違反行為や人権侵害行為等が行われていた場合、「責めに帰すべき事由」に該当するとしています。
ただし、その違反行為等が行方不明の原因ではないことが確認できる場合は除かれます。
つまり、確認されるのは主に3点です。
①行方不明者の発生前1年以内か
②取消事由に該当し得る違反行為等があったか
③その行為と行方不明との関係をどう説明できるか
賃金不払いなどの法令違反や人権侵害があれば、具体的な事情を確認する必要があります。
会社側では、実習内容、労働時間、賃金支払い、相談対応などの記録を残しておくことが重要です。
優良要件の配点では、ゼロなら加点、責めによるものは大幅減点
第3号技能実習を行わせるには「優良な実習実施者」であることが求められ、技能実習法施行規則第15条に基づく点数制で判定されます。
運用要領は「下記の表で6割以上の点数を獲得した場合に『優良』である」としています。
失踪が関わるのは「④法令違反・問題の発生状況」の項目です。
評価項目 | 区分 | 点数 |
|---|---|---|
直近過去3年以内における失踪がゼロ又は失踪の割合が低いこと | ゼロ | 5点 |
同上 | 10%未満又は1人以下 | 0点 |
同上 | 20%未満又は2人以下 | -5点 |
同上 | 20%以上又は3人以上 | -10点 |
直近過去3年以内に責めによるべき失踪があること | 該当 | -50点 |
出典: 出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度運用要領」第4章(第2節第11「優良な実習実施者に関するもの」と、参考様式第1-24号
「直近過去3年以内」は申請時を起点に遡った3年間で、直近3技能実習事業年度ではありません。
失踪者とは、監理団体等から機構へ「行方不明」となった旨の技能実習実施困難時届出書が提出された者です。
割合は、分子が同期間の失踪者数、分母が同期間に新たに受入れを開始した技能実習生の総数です。
なお、割合より人数で評価した方が申請者に有利な場合は、人数で評価します。
小規模事業者への配慮によるものです。
責めによるべき失踪は個別具体的に判断され、報酬を適切に支払わない、劣悪な環境下での業務を強制する等により失踪が発生したと考えられる場合は、帰責性があるとされます。
確認対象は「優良要件適合申告書(参考様式第1-24号)」です。
監理団体には事業停止、送出機関との違約金契約にも注意
団体監理型では、監理団体側の失踪対策も重要です。
運用要領第5章第14節第2「事業停止命令に関する事項」では、失踪技能実習生を高い割合で発生させ、かつ失踪防止策を十分に講じていない監理団体に、主務大臣が事業停止(新規の受入れ停止)を命じる場合があるとしています。
命令期間中は、その監理団体を監理団体とする新規入国を伴う技能実習計画は認定を受けられません。
また、送出機関との契約で、失踪などを理由とする違約金を定めることも認められません。
第5章第2節第2(5)は、監理団体と取次送出機関との間の違約金契約を禁止し、技能実習生の失踪を理由に送出機関が実習実施者へ違約金を支払う契約も具体例として挙げています。
一方、優良な実習実施者の要件では、⑤「相談・支援体制」Ⅲとして、他の実習実施者で技能実習の継続が困難となった技能実習生を受け入れた場合、基本人数枠以上なら25点、未満でも15点が加点されます。
失踪後、技能実習の在留資格はどうなるか
技能実習生の失踪後、在留資格が直ちに消滅するわけではありません。
入管法第22条の4第1項第5号は、正当な理由なく技能実習の活動を行わず、他の活動を行い又は行おうとして在留する場合、第6号は、正当な理由なく技能実習の活動を3か月以上行わない場合を取消事由としています。
入管庁は技能実習生の失踪を第5号・第6号の具体例として示しています。
取消し時は原則30日を超えない範囲で出国期間が指定されますが、第5号で逃亡のおそれがある場合は例外です。
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失踪者数はいま減っている — 令和7年の統計が示す構造の変化
個別事案から全体を見ると、令和7年の失踪者数は3,950人。
令和6年の6,510人から39.3%減り、令和5年の9,753人をピークに2年連続で減少しました。
「失踪者数」は現在の所在不明者数ではない
入管庁が公表する「失踪者数」は、現在も行方不明となっている技能実習生の人数そのものではありません。
技能実習法上、技能実習の継続が困難となった場合に受入れ機関が機構へ提出する「技能実習実施困難時届出書」のうち、技能実習生が行方不明となったことを理由とする届出を集計した数です。
そのため、届出後に所在が確認された人も含まれます。
入管庁も、退去強制手続等で所在を把握している者がおり、「全員が所在不明の状態ではない」と注記しています。
さらに、届出後3か月以内に所在を把握した者を除いた人数も併記しています。
「3,950人が現在も国内で行方不明」と読むのは誤りです。
令和7年は3,950人、前年比39.3%減
入管庁の資料(令和8年7月公表・速報値)は次のように整理しています。
令和7年の失踪者数は3,950人、前年から2,560人の減少(39.3%減)
技能実習生数に占める失踪者数の割合は0.6%、前年から0.6ポイント減少
令和3年〜令和7年の失踪者計36,386人のうち、令和8年5月31日現在で所在が不明な者は6,609人
分母となる技能実習生数の定義も資料にあり、「前年末の在留技能実習生と当年に入国した又は新たに在留資格変更許可を受けた技能実習生の合計人数」で、令和7年は614,517人です。
受入れ規模が拡大するなかで件数が4割近く減った、ということになります。
国籍 | 令和6年 | 令和7年 | 対前年増減率 | 令和7年の構成比 |
|---|---|---|---|---|
総数 | 6,510人 | 3,950人 | -39.3% | ― |
ベトナム | 3,865人 | 2,593人 | -32.9% | 65.6% |
インドネシア | 520人 | 444人 | -14.6% | 11.2% |
ミャンマー | 1,263人 | 398人 | -68.5% | 10.1% |
カンボジア | 275人 | 195人 | -29.1% | 4.9% |
中国 | 335人 | 137人 | -59.1% | 3.5% |
出典: 出入国在留管理庁「技能実習生の失踪者数の推移」(令和8年7月公表・速報値)および同「国籍別の失踪者数(令和3年〜令和7年)」。国籍別は失踪者数の多い上位5か国のみを抜粋しており、総数にはこの5か国以外の国籍も含まれます。
ミャンマーの数字が示すこと
ミャンマーは、令和7年の失踪者数が1,263人から398人へ68.5%減りました。
一方、技能実習生数は前年比13.3%増の45,749人です。
受入れ規模が増える一方で失踪者数が大きく減ったことから、本人の資質や国籍だけで説明することはできません。
入管庁も、令和6年10月1日の「ミャンマー緊急避難措置」の運用見直し以降、失踪者が大幅に減少したと説明しています。
制度や運用の変化が失踪の発生状況に影響し得ることを示す数字です。重要な点です。
ネパールは、この表に単独では出てきません
入管庁の国籍別の表に載っているのはベトナム・インドネシア・ミャンマー・カンボジア・中国・フィリピン・バングラデシュ・スリランカ・ウズベキスタン・タイの10か国で、ネパールは「その他」(令和7年は35人)に含まれています。
内訳は公表されていないため、「ネパール人の失踪者は何人」と書ける一次データは存在しません。
ネパール人は本当に辞めにくいのかでも同じ整理をしていますが、国籍別の失踪率を数字で断言する記事は出典を確認したほうがよいでしょう。
失踪は「入口の確認」と「受入れ体制」の問題
公表資料が示す2つの要因
入管庁は、失踪の主な原因として「賃金等の不払いなど、実習実施者側の不適正な取扱い」と「入国時に支払った費用の回収等、実習生側の経済的な事情」を挙げています。
前者は受入れ側が改善でき、後者は来日前の費用負担に関わります。
原因を分けて考えることが、失踪防止策を具体化する出発点です。
別々に対策を考える必要があります。
借金は、来日前の費用負担とセットで見る
入管庁の「技能実習生の支払い費用に関する実態調査」(令和4年7月公表)は、技能実習生2,184人から有効回答を得た調査です。
来日前に母国で借金をしている割合は54.7%(n=2,107)
借金の総額の平均値は54万7,788円(国籍別ではベトナム67万4,480円、カンボジア56万6,889円、中国52万8,847円、ミャンマー31万5,561円など)
送出機関へ支払った費用総額の平均値は52万1,065円(n=1,336)
聴取期間は令和3年12月10日から令和4年4月末です。
調査対象の国籍は6か国で、ネパールは含まれていません。
そのため、ネパール人技能実習生の借入状況をこの調査から示すことはできません。
半数を超える技能実習生が来日前に借金を抱えていたことは、失踪の背景を考えるうえで重要なデータです。
ただし、「借金がある人ほど失踪する」とまでは、この調査からはいえません。
また、来日前の費用負担と来日後の賃金への不満が重なると、より高い賃金を求める行動につながり得る、という部分も推測として扱う必要があります。
当社では、こうした来日前の費用負担を入口で抑える考えから、ネパールで自社の日本語学校を運営しています。教育も重視します。
出典: 出入国在留管理庁「技能実習生の支払い費用に関する実態調査の結果について」(令和4年7月)。
入口で選び、体制で支える
当社代表の岡本は、外国人比率と治安をめぐる議論の中で、「誰でも入れる」のではなく、なぜ日本に来るのか、何をしてはいけないのかを理解した人を受け入れ、適切な会社で働いてもらう仕組みが重要だと話しています。
これは治安についての発言で、失踪そのものを論じたものではありません。
ただ、失踪防止を考えるうえでも、来日前の理解と入国後の受入れ体制を分けて考える視点として使えます。
入管庁も、失踪防止には「技能実習生と受入れ機関のみなさまとのコミュニケーションの機会を増やすこと」「信頼関係を深めること」が大切だとしています。
当社は浜松でAsian Mart & Cafeを運営し、月1回、ネパール人の交流会を無料で開いています。
同郷の人と母語で話せる場があることで、職場の上司には言いにくい悩みを相談できる経路が一つ増えます。
相談先が一つだけでないことも、受入れ後の支援体制を考えるうえで重要です。
日常の小さな違和感や生活上の困りごとを早い段階で拾えれば、問題が大きくなる前に受入れ企業や支援側へつなぐこともできます。
失踪防止は、本人だけに注意を求めるのではなく、入口での認識合わせと、来日後に相談できる仕組みの両方から考える必要があります。
受入れ後の見守りを継続することが、孤立を防ぐ土台になります。
詳しくは職場の外の居場所づくりと製造業で外国人材が辞める理由へ。

よくある質問(FAQ)
Q1. 数日で戻ってくる可能性があるので、届出を待ってもいいですか
A.待つのは適切ではありません。
法令は「遅滞なく」の提出を求め、運用要領は事由発生から2週間以内を目安としています。
所在が判明し説得中でも届出が必要で、提出後に復帰を希望した場合は機構へ相談します。
本人が戻る可能性だけを理由に、提出を先延ばしにしないことが重要です。
受入れ側で判断し、まず対応します。
Q2. 1人失踪すると、もう技能実習生を受け入れられなくなりますか
A.いいえ。施行規則第12条第12号の2が禁じるのは、過去1年以内に「責めに帰すべき事由」による行方不明者を発生させた場合です。
帰責性がなければ、この基準には抵触しません。
優良要件でも、失踪1人以下は0点です。
ただし、失踪に関連して賃金不払い等の法令違反・人権侵害があれば、-50点となる場合があります。なお個別に判断します。
Q3. 失踪者数が減っているというのは本当ですか
A.入管庁の令和8年7月公表資料(速報値)では、令和7年の失踪者数は3,950人で前年比39.3%減、技能実習生数に占める割合も0.6%へ低下しました。
上位5か国もいずれも減少しています。
ただし、これは行方不明を理由とする届出の集計で、現在も所在不明である人数ではありません。
まとめ
所在確認と届出は並行する
同僚への聞き取りや連絡先の確認を進めつつ、技能実習実施困難時届出書も遅滞なく提出。
企業単独型は第9号、団体監理型は第18号を機構へ提出。届出先ごとに期限が違う
警察の行方不明者届は雇主も届け出ることができる。
ハローワークは雇用保険被保険者なら離職翌日から10日以内、被保険者でなければ翌月末まで。
技能実習生本人の入管への所属機関届出は14日以内。1人失踪で直ちに受入れ停止ではない
計画認定では「責めに帰すべき事由」による行方不明者を発生させていないことが基準。
優良要件でも1人以下は0点ですが、関連する法令違反等があれば減点対象。統計は現在の所在不明者数ではない
令和7年は3,950人、前年比39.3%減、割合0.6%。
届出の集計であり、現在も所在不明の人数ではない。
次に読むべき記事:
いま連絡が取れていない状態でも、できることは残っています
この記事を読んでいる方のなかには、いままさに技能実習生と連絡が取れず、本人への心配と会社としての対応に追われている方もいるでしょう。
こうした場面でも、やるべきことは残っています。
重要なのは、起きた事実だけでなく、その前の受入れ状況と、発生後に会社がどう対応したかを整理することです。
当社はネパール現地に自社の日本語学校とトレーニングセンターを持ち、面接前の教育から日本での定着までを一貫して支援しています。
現在の事案でも、今後の受入れ体制の見直しでも、外部の視点を入れることで整理しやすくなります。
判断に迷う段階で構いませんので、お問い合わせからご相談ください。
いま必要な届出と、その後に考えるべき対応を切り分けます。まず順番に整理します。
本記事は公表情報をもとに制度を整理しています。最新の省令・運用要領については、必ず出入国在留管理庁などの公式情報をご確認ください。